取締役会長メッセージ

三菱地所株式会社 取締役会⻑ 吉田 淳一

当社は、「住み・ 働き・ 憩う方々に満足いただける、地球環境にも配慮した魅力あふれるまちづくりを通じて、真に価値ある社会の実現に貢献します」という当社グループの基本使命の実現に向け、コーポレートガバナンス体制の整備・推進を経営の最重要課題の一つとして位置付けています。

指名委員会等設置会社である当社における取締役会の役割は、経営の基本方針を決定するとともに、経営全般の監督を担うことにあります。株主をはじめとするステークホルダーへの説明責任を果たすべく、経営の透明性及び客観性の確保に努めており、これまでに、業績連動型役員報酬の導入、取締役会及び各委員会における社外取締役比率向上、各委員会の全委員長の独立社外取締役への変更、買収防衛策の非更新、取締役会の第三者評価の導入、スキル・マトリックスの開示、女性取締役を2名に増員するなど、継続的な取り組みを実施してきました。

2024年3月期は、ガバナンス体制の拡充を企図し、取締役会構成に関し執行兼務の取締役を1名減じ、取締役会に占める社外取締役構成比率を向上させたほか、数年に一度実施することとしている取締役会の第三者評価を行い、取締役会の実効性等について検証を実施しました。また、「長期経営計画 2030」で掲げる資本政策の一環として資本効率及び株主価値の向上を図るため、2020年3月期及び2022年3月期に実施した自己株式の取得(総額約1,300億円)に続き、約1,000億円の自己株式の取得(取得期間:2022年11月~2023年11月)を完了しました。なお、2024年5月には約500億円の自己株式の取得(取得期間:2024年5月~同年11月)を決議しています。

加えてダイバーシティ拡充の観点では、国連グローバル・コンパクト事務所と国連婦人開発基金(UNIFEM、現 UN Women)が共同で策定した女性のエンパワーメント原則(WEPs)に賛同し、同原則に基づき行動するためのステートメントに署名を行いました。

2020年4月からスタートした「長期経営計画 2030」は、取締役会として、約1年間にわたりしっかりと議論し、練り上げたものです。「株主価値向上戦略」に加え、サステナブルな社会の実現に向けた取り組みを実行する「社会価値向上戦略」を両輪として、当社グループの基本使命を実現していくことを主軸に据えています。

長期経営計画も5年目に入り、新型コロナウイルス感染症の影響による価値観の変化、金利上昇リスク・インフレリスク・地政学リスクの高まり等、計画策定時から事業環境に変化が生じている状況を踏まえ、2024年3月期に「長期経営計画 2030」のレビューを行いました。「株主価値向上戦略」と「社会価値向上戦略」を両輪とする考え方は変更せず、「株主価値向上戦略」においては、原点回帰(Return to Basics)をコンセプトに、不動産事業に係る開発・運営・営業・フィービジネス・資金管理・コーポレート等における「稼ぐ力」の底上げを目指すこと、また、「社会価値向上戦略」においては、サステナビリティ重要テーマを「当社グループと社会、双方の持続可能性確立のためのアクション」として再定義し、当社グループのコアビジネスであるまちづくりとの親和性を高め、事業とサステナビリティの融合を目指すこととしました。2030年の目標達成に向けて、経営計画をより一層推進していきます。

取締役会では、近年の急激な環境変化の中において当社グループに求められる価値も変わっていくという認識のもと、変化をチャンスに変え、ステークホルダーの皆様に支持され、当社グループらしく成長を続けるためには何が必要か、議論を重ねています。

取締役会の議長として、執行経験を活かしながら、多様な知見・経験を有するメンバーで構成される取締役会での活発な議論を促し、リードすることで、長期的な目線での経営監督体制を構築していきます。私たち取締役会は、当社グループの基本使命のもと、これからの社会や環境の変化を見据えた経営の推進に全力で取り組み、株主・ 投資家の皆様の期待に応えてまいります。

2024年8月

三菱地所株式会社 取締役会⻑

吉田 淳一