長期経営計画2030

三菱地所グループは2024年5月に長期経営計画 2030に関するReviewを発表しました。

1.本経営計画において目指す姿

当社グループの基本使命と持続的成長の実現に向け、「社会価値向上戦略」と「株主価値向上戦略」を両輪に据えた経営を実践します。

長計経営計画 2030 Reviewにおいては、サステナビリティビジョン2050で定める「Be the Ecosystem Engineers」を事業においても大切にすべき基本方針とし、事業面においては、原点回帰(Return to basics)を掲げ、当社グループの稼ぐ力を底上げしてまいります。そのうえで、株主価値向上戦略では、ROA・ROE・EPSのKPIを掲げ、高効率で市況変化に強い事業ポートフォリオへの変革を目指します。

社会価値向上戦略では、当社グループを取り巻く自然環境と社会環境の変化、サステナビリティに関する企業への要請の一層の複雑化を踏まえ、サステナビリティ重要テーマとマテリアリティ(重要課題)の改定を実施しました。

今回の改定において、これまで当社グループから社会への価値提供の軸としての機能を担っていたサステナビリティ重要テーマを「当社グループと社会、双方の持続可能性確立のためのアクション」として再定義し、当社グループのコアビジネスであるまちづくりとの親和性を高めることで、事業とサステナビリティの融合を目指します。

本経営計画において目指す姿

2.計数目標達成に向けた前提・指標

計数目標達成に向けた前提・指標

3.【社会価値向上戦略】マテリアリティと4つの重要テーマ

【社会価値向上戦略】マテリアリティと4つの重要テーマ

4.【株主価値向上戦略】当社グループの強みと成長戦略

【株主価値向上戦略】当社グループの強みと成長戦略

1.「長期経営計画2030」策定の背景

2017年に策定した中期経営計画(2018年3期~2020年3期)については、計数目標を全て達成見込みであり、資本政策やコーポレート・ガバナンスにおいても進展するなど、当社グループとして順調な成長を遂げました。

これを土台とし、当社グループが今後より長期的にサステナブルにステークホルダーに対して価値提供を行うため、2020年4月から開始する「長期経営計画2030」を策定しました。

2.経営計画において目指す姿

当社グループの基本使命と持続的成長の実現に向け、「社会価値向上戦略」と「株主価値向上戦略」を両輪に据えた経営を実践します。

社会価値向上戦略では、サステナブルな社会の実現に向けた取り組みを実行し、まちの利用者や従業員を含む全てのステークホルダーへのより高い価値の提供を行います。

株主価値向上戦略では、ROA・ROE・EPSのKPIを掲げ、高効率で市況変化に強い事業ポートフォリオへの変革を目指します。

当社グループの基本使命

3.当社グループの強みと成長戦略

当社グループの強みである「超長期視点でのまちづくりと時代を先取りするDNA」及び「膨大なエンドユーザーとの接点と膨大な不動産への関与」を活かし、「国内アセット事業」、「海外アセット事業」、「ノンアセット事業」の3つ領域にて成長の実現を目指します。

また、ノンアセット事業をはじめとする不動産市況の変動に強い収益の拡大と柔軟な資本政策を組み合わせ、ROA・ROEの底上げを図ります。

当社グループの強みと成長戦略

4.計数目標

(1)2030年の計数目標※括弧内は20年3月期予想(2019年5月14日公表値)
ROA※1 ROE※2 EPS※3
5% (3.9%) 10% (7.8%) 200円 (100.20円)
ROA※1 5% (3.9%)
ROE※2 10% (7.8%)
EPS※3 200円 (100.20円)
(2) 目標達成に向けた前提・指標
利益成長 株主還元 財務健全性
事業利益※4
3,500~4,000億円程度
配当性向:30%程度

資本政策の一環としての
自己株式の取得

ただし、不動産市況・投資環境・株価・ROE/EPSの状況等に応じて、株主還元の手法や規模感については柔軟に検討
現状の格付水準が維持可能な
財務健全性の確保

【参考】現状格付
R&I:AA-
S&P:A+
MOODY’S:A2
利益成長 事業利益※4
3,500~4,000億円程度
株主還元 配当性向:30%程度

資本政策の一環としての自己株式の取得

ただし、不動産市況・投資環境・株価・ROE/EPSの状況等に応じて、株主還元の手法や規模感については柔軟に検討
財務健全性 現状の格付水準が維持可能な
財務健全性の確保

【参考】現状格付
R&I:AA-
S&P:A+
MOODY’S:A2

※1 ROA=事業利益※4 ÷ 総資産(期首期末平均)

※2 ROE=親会社株主に帰属する当期純利益 ÷ 自己資本

※3 EPS=親会社株主に帰属する当期純利益 ÷ 期中平均株式数

※4 事業利益=営業利益+持分法投資損益。尚、事業利益については、ノンアセット事業の成長をはじめ、スピード感をもった事業展開を目指す上で、第三者との協業が従来以上に重要であり、それら事業からのリターンも含めた利益をモニタリングするために設定。

(3) ROE向上に向けた基本方針
  • ROAの向上を通じたROEの向上に主眼を置き、レバレッジについては現状の格付水準が維持可能な範囲で適切にコントロール。
(4) 計数目標の実現イメージ
  • 事業利益は国内アセット、海外アセット、ノンアセットの3つの事業で各500億円程度の成長(20年3月期比)を見込み、3,500~4,000億円程度の水準を目指す。(20年3月期予想は2,305億円)
  • 総資産については、不動産市況に応じた成長投資、資産売却、株主還元、資金調達等の最適な組み合わせにより、1~2兆円増加の7~8兆円程度を想定。(20年3月期予想は5.9兆円)

5.資本政策

(1) 基本方針
  • 不動産市況に応じた、成長投資・資産売却・株主還元・資金調達の最適な組み合わせとバランスシートのコントロールによる企業価値向上。
(2) キャピタルアロケーションの方針
  • 営業キャッシュフローと資金調達余力によるキャッシュインフローは、①ベース株主還元、②ベース投資・回収、③戦略的アロケーション(成長投資又は追加還元又は負債抑制)に配分。
(3) 直近3か年の投資回収計画(2021年3月期~2023年3月期)
  • 今後3年間で約1.5兆円のベース投資※5 約1.1兆円の物件売却による回収を計画。
  • また、効率性の改善に向け、1,000~2,000億円程度の低効率資産の売却を見込む。
  • 上記に加え、営業活動や財務活動を通じて得られるキャッシュ(6,000億円程度を計画)については、成長投資、追加還元、負債の抑制のいずれかに戦略的にアロケーションする方針。

    ※5 投資決定済み案件(一部見込みを含む)への投資

6.事業戦略

計数目標達成のため、事業利益の成長に向けた戦略を以下の通り設定致します。

(1) 国内アセット事業:+500億円程度(20年3月期比)
  • 丸の内エリアでは、今後のまちづくりのテーマを「丸の内Reデザイン」と掲げ、人・企業が集まり交わることで新たな「価値」を生み出す舞台を目指す。また、常盤橋及び有楽町を重点更新エリアとし、2030年までに総額6,000~7,000億円程度を投じ、再開発やリノベーションを推進。
  • 今後10年間で、丸の内エリアの再開発をはじめ、アウトレットモールや物流施設等を含む国内アセット事業全体で、NOI※6ベースで約600億円規模の新規開発や増床プロジェクトを推進

    ※6 NOI=賃貸収益 - 賃貸費用(減価償却費を含まない)

  • 回転型事業※7については、不動産市況や投資環境に応じ、物件売却によるキャピタルゲインを柔軟にコントロールする。

    ※7 物件を開発後、グループ会社が運営するファンド等の投資家へ売却し、売却後は、AM・PM等のフィービジネスを継続受託する事業モデル

  • 住宅事業については、2020年代前半は賃貸マンションの開発・売却、及び分譲マンションの再開発案件獲得に注力。2020年代後半は再開発案件の進捗により、分譲マンションの売上計上戸数が回復、賃貸マンションは不動産市況に応じたキャピタルゲインの最大化を図る。
(2) 海外アセット事業:+500億円程度(20年3月期比)
  • 事業利益を900億円程度、総資産を現状の2倍程度となる1.5兆円程度と想定。
  • 強力な基盤を構築している欧米事業に加えて、アジアを中心とした開発事業を強化し、現状、海外事業におけるアジア事業の比率は総資産で28%、事業利益で5%のところ、2030年までにそれぞれ45%程度に高める。
  • アジアについては、当社主導型の開発事業の拡大を図りながら、投資残高の積み増し、回転型資産のポートフォリオの構築を強化。
  • 欧州については、収益の安定性と資本効率向上のバランスを意識した投資・回収を実行。また、決定済みの大規模開発案件を中心として開発事業を更に推進。
  • 米国については、ロックフェラーグループインターナショナル社のノウハウを活用した回転型事業を強化。また、現地パートナーとのJV型開発をはじめ、開発事業をより多様化。
(3) ノンアセット事業:+500億円程度(20年3月期比)
  • 投資マネジメント事業における継続的なAUM拡大、ホテル運営客室数の増加等、既存領域の成長により利益を安定的に拡大。また、建物運営管理・設計監理等のフィービジネスでは、規模の拡大だけでなく、IT活用による効率化等も推進しながら利益成長を目指す。これらの着実な成長により、2030年に向けて事業利益を200~250億円程度増加させる。
  • 社会課題を背景とした潜在的ニーズに対し、BtoCやBtoBtoCに着目したサービスやコンテンツの提供などの新たな事業を展開し収益機会を獲得、2030年に向けて事業利益を250~300億円程度増加させる。

7.ESGの取組み

(1) マテリアリティ(サステナビリティ経営上の重要課題)
  • サステナビリティ経営上の重要課題として、7つのマテリアリティ及びそれに伴う機会とリスクを特定。マテリアリティは、環境、グローバリティ、コミュニティ、ダイバーシティ、少子高齢化、ストック活用、デジタル革新の7つを設定。
(2) マテリアリティを踏まえ「三菱地所グループのSustainable Development Goals 2030」を策定
  • サステナブルな社会の実現に向けた4つの重要テーマを設定。
    • ① Environment:気候変動や環境課題に積極的に取り組む持続可能なまちづくり
    • ② Diversity & Inclusion:暮らし方の変化と人材の変化に対応しあらゆる方々が活躍できるまちづくり
    • ③ Innovation:新たな世界を生み出し続ける革新的なまちづくり
    • ④ Resilience:安全安心に配慮し災害に対応する強靭でしなやかなまちづくり
(3) 主なKPI(重要指標)と目標
  • CO2排出量を2030年までに35%削減(目標)※2018年3月期比
  • 1m²あたりの廃棄物排出量を2030年までに20%削減(目標)※2020年3月期比
  • 再生可能電力比率を2030年までに25%へ(目標)※現在1.3%
  • 廃棄物再利用率を2030年までに90%へ(目標)※現在45.5%