メインビジュアル メインビジュアル

三菱地所と丸の内「人の営みを育む」
都市開発で、
街と人の関わりを再構築。

オフィスを中心としたまちから、より多様な機能を備え、さまざまな人が集まるまちへ。三菱地所は、これからの大丸有エリアのあるべき姿を考え抜き、中長期的なスタンスでまちづくりを推進しています。地権者をはじめとする地域のステークホルダーはもちろん、さまざまな分野から有識者を招き、意見交換を重ねています。行政に対してもこのエリアが変わることの社会的な意義を共有し、まちの再構築に必要な許認可を獲得。その後の建築計画においては、共同事業者や設計・施工を担うプレーヤーとも密接に連携します。エリア全体のブランド価値をより高めていくために、企業の枠を超えて幅広く連携しながらまちづくりに取り組んでいます。

三木 彩恵子

三木 彩恵子

エリアマネジメント企画部 副主事

吉田 麻里奈

吉田 麻里奈

プロジェクト開発部 主事

人と企業が集まる交流の場をつくり、新しい価値を生み出す

2020年以降、コロナ禍を経て三菱地所は大丸有エリアに求められる役割を見つめ直し、このまちの目指す姿を再定義しました。それは、これまでのように就業者28万人が月曜から金曜まで働く場ではなく、多くの人がその時々で働き方や働く場所を選ぶようになったという変化に応えるということ。例えばこのまちを訪れると色々な人と直接話すことができる、自分にとって必要な情報を得ることができる、刺激や学びなど面白い体験ができるといったことがあると、このまちで働く人でなくとも、まちを訪れる理由になります。
エリア就業者のみでなく、多様な人や企業が入れ替わりさまざまな形で交わり、そこで新しい交流が生まれるとまちの新しい価値に繋がっていくのではないかと考えています。
一日8時間働くオフィスワーカーのためだけのまちづくりではなく、より幅広い志向を持った人たちが、最適な時間に集まってフレキシブルに交流できる。訪れるだけで新しい発見や学びがあり、仲間やコミュニティが自然発生的にかたちづくられ、共創によるアウトプットの価値が最大化するような舞台を提供していきたいと考えています。

テレワークが浸透しオフィスの在り方を見直す企業も増えていることから、シェアオフィスやコワーキングスペースなど、個人や企業が柔軟に利用しやすいワークスペースを整備し、月単位や曜日単位、会員制といった固定期間に縛られない契約形態も拡充しています。またフィンテックなど特定分野で優れたテクノロジーを持つ起業家やスタートアップ(ベンチャー企業)を支援するコミュニティの運営にも注力してきました。より幅広い生活者に向けて、道路などの公共空間を解放し、さまざまなイベントを開催して新たな賑わいの創出につなげています。

このような大丸有エリア全体が目指すべき方向性を定め、地域の地権者と行政が協議して「まちづくりガイドライン」を策定するなどエリアマネジメント団体としての活動に取り組んでいるのが、三菱地所のエリアマネジメント企画部です。同部の副主事である三木彩恵子は、部門の役割について次のように話します。

三木

地権者の方々とのディスカッションを経て、「これまでにない機能のスペースを設けたい」などのお声があれば、東京都などの行政に働きかけ、必要に応じて規制を緩和するための協議を行うこともエリアマネジメント企画部の役割になります。全てのゴールは、より多くの人にこのエリアに関心を持っていただき、訪れていただくこと。その結果として、まちのブランド価値を向上させることです。一つひとつの取り組みを来街者の方々がどのように受け止めておられるのか、常に意識しながら業務に臨んでいます。

エリアマネジメント企画部について語る三木

三木らのチームが旗振り役となって取り纏めた長期的なまちづくりの方向性に沿って、三菱地所が都心部で推進するさまざまな再開発計画(常盤橋街区を除く)を企画し、プロジェクトを推進しているのがプロジェクト開発部です。特に大丸有エリアでは、約120haという広い対象地域において、長期的な視点で段階的かつ計画的にまちづくりを進める必要があります。個別の建物の建替えに際しては、地区計画や、本地区の将来像や開発に関する整備方針を取り纏めた「大手町・丸の内・有楽町地区まちづくりガイドライン」に適合させることで、連続した街並みやスカイラインが形成されています。同ガイドラインでは、各ゾーンや主要な通りの特性にあわせて機能や景観、ネットワーク、環境等の整備方針が纏められています。
建替えや更新のタイミングでは、特にハード面において一定のルールに基づき、隣接する建物間の関係性への配慮した計画や、公的空間と建物の低層部や敷地内空地等の連続な整備、車歩道の幅員や壁面位置の設定、建物の軒線の継承、地上地下の歩行者ネットワークの整備などを行うことにより、長期的な視点でまちづくりを進めてきました。プロジェクト開発部で主事を務める吉田麻里奈は、エリア開発における三菱地所の役割をこう語ります。

吉田

大手町、丸の内、有楽町というそれぞれのエリアが目指している将来の姿をしっかりイメージしながら、現在のまちにはない新しい機能や魅力をどのように採り入れていくのかを考え抜くことが大切だと感じています。時代の変化を見据え、プロジェクトごとにどのような特性を持つべきか、設計に着手する前の構想段階から検討します。また、当社は、大丸有エリアにおいては長期的にまちづくりを推進してきたことによる、ノウハウを蓄積しています。それらを礎とし、自社で所有する物件の再開発プロジェクトのみに限らず、複数の事業主体が共同推進する案件の代表企業となることや、他の建物所有者の開発案件にアドバイザリーの立場で携わる機会も増えています。

 

訪れてみたくなる「丸の内仲通り」を演出し、
新たな賑わいをつくる

職業や年齢、国籍を問わず、多くの人がまちに魅力を感じ、訪れてみたくなる場所をつくるさまざまな試みを、三菱地所は継続的に展開してきました。その代表例が、丸の内エリアのメインストリートである「丸の内仲通り」を人々がリラックスして楽しめる場所として整備し、来街者や就業者に解放する取り組みです。

通り全体を人に優しい空間とするため、行政の許可を得て車道の幅を狭め、左右の歩道の幅を1メートルずつ拡大しています。色合いや質感が豊かで滑りにくいアルゼンチン斑岩で車道と歩道を一体的に舗装し、統一感のある佇まいをつくり出しました。また、街路樹には緑が豊かで木陰ができる効果の大きいケヤキを植え、1960年代に高さ31メートルに揃えられたビルのスカイラインを背景に、この通りの景観に独特の表情を与えています。

丸の内仲通りの変化

オフィスに特化し、効率性を追求した平日のみの街
多様な機能をもち、平日も週末も人で賑わう街

三木

丸の内仲通りでは2019年から「Marunouchi Street Park」という期間限定の社会実験を開催し、24時間交通規制を行い、訪れる人に思い思いの時間を過ごしていただいています。今年は車道と歩道に芝生を敷き詰め、夏休み期間の41日間にわたってピクニックシートやテーブルを用意し、軽く飲食していただけるような環境を整えました。初年度は1ブロックだけの面積でしたが、現在では3ブロックまで拡大し、よりたくさんの方にお楽しみいただいています。最近はファミリーでお越しの方々が多く、「期間限定なのはもったいない」「今後も継続して開催するなら教えてほしい」といった声をお聞きしました。これからも継続して、仲通りの魅力・仲通りでの過ごし方を発信していきたいと考えています。

吉田

「Marunouchi Street Park」は行政や地域の地権者様と段階的なコミュニケーションを積み重ね、その結果として実現した実証実験でもあります。今では定着している冬の「イルミネーション」、夏の「ドライミスト」などの取り組みも地権者の方々のご意見を求め、ご協力をいただいてきたという経緯があります。エリアの地権者や就業者等の関係者にとっては直接的なメリットを実感しずらい取組みも、徐々に活動が広がりを見せるにつれて、理解を得られるようになることがあります。これまで何十年におよぶ三菱地所の取り組みを引き継ぎながら、多くのステークホルダーとともに一歩ずつ形にしていく営みに、自分自身も関わっているんだなと感じているところです。こうしたイベントや施策を継続することは、長期的にはこのエリアにプライスレスの価値をもたらすと考えています。

有楽町から常盤橋へ。
「丸の内NEXTステージ」では周辺地域に広がるまちづくり

大丸有エリアのまちづくりの軌跡をエリア別に見ると、2000年以降は丸ビル、新丸ビルのリニューアル開業をエポックとして、東京駅を起点に丸の内エリアを再開発していき、その後、大手町エリアを中心にビジネス機能を強化してきました。そして2020年、三菱地所は「丸の内NEXTステージ」という新たなまちづくりビジョンを発表し、その実現のために動き出しています。

有楽町エリアではオフィス街とは異なる多様な魅力が生きるまちづくりを模索しながら、既存ビルの建て替えプロジェクトを推進中です。有楽町エリアは銀座や日比谷といった商業地に隣接し、シネコンがあるだけでなく日生劇場をはじめ劇場やホールも多く、エンターテインメントを満喫できるエリアでもあります。このまちの将来の姿を議論する中で、地域プロデュースの専門家や大学教授、舞台プロデューサーなどのクリエイターなど、多方面で活躍する外部の有識者を招き、対話を重ねながらまちづくりの新たな方向性や施策につなげています。

個人単位のアイディアを形にするワーキングコミュニティ『SAAI』

さらに現在、東京駅の北側、大手町・丸の内・八重洲・日本橋の結節点にあたる常盤橋エリアでも、大規模なまちづくりに取り組んでいます。常盤橋プロジェクトの常盤橋タワーでは、オフィスフロアに加えて就業者向けの食堂やCaféスペースを採用しました。日本で一番高いオフィスビルとなるTorch Towerでは、ホテルや住居、展望フロアも用意する計画です。広場スペースでは全国から新鮮な食材や工芸品が集うマーケットを定期開催するなど、東京駅前にありながら衣食住働が混在する新しいまちづくりを目指しています。

常盤橋プロジェクトの中心:Tokyo Torch

再開発プロジェクトでは、既存ビルの解体工事と新築工事で4年から6年といった工期が必要になります。そうした工事着手までのビルの暫定利用期間中や店舗入替期間もまちが寂しくならないよう、例えば新有楽町ビルには「有楽町『SAAI』 wonder working community」という新しいコミュニティの拠点を設けたり、アーティストの活動の場として活用するなど、期間限定ならではの活用方法を模索しながらプロジェクトを進めています。

三木

現在動いている様々な取り組みは「丸の内NEXTステージ」と呼ばれています。周辺エリアとのつながりだけでなく、それぞれのエリアの個性が互いに補完し合うプラスの効果も狙いの一つです。広い視野でエリア全体の価値を考えるからこそ、どのようにまちのブランド力を高めていけるのかを試行錯誤し、各種イベントなどの施策に連携できます。さらに、自分たちが関わった施策が来街者や就業者にどう受け止められたのか、イベント参加者の表情などから直接感じ取ることも可能です。このようなダイレクトな手応えを感じながら、より多くのステークホルダーの共感を得られるよう、三菱地所のまちづくりを推進していければと思っています。

吉田

まちの魅力は、頭で考えるものではなく、個人がその場所での体験を通じて直感的に「感じとる」ものではないでしょうか。大丸有エリアでは、一つの建物の事業性だけでなく、エリア全体を俯瞰して新たな機能を配置したり、実験的な取り組みを導入することが可能です。エリアの将来あるべき姿を思い描き、そのイメージを社内外の関係者との対話を通じて一つひとつ形に落としていく。困難も少なくないですが、こうしたプロセスを積み重ね、三菱地所としてこのまちの付加価値をさらに高めていきたいですね。