その他
   2025年度グッドデザイン賞 三菱地所グループ全体で16件受賞

三菱地所グループ23年連続の受賞

三菱地所グループの三菱地所株式会社(以下「三菱地所」)、三菱地所レジデンス株式会社(以下「三菱地所レジデンス」)、株式会社三菱地所設計(以下「三菱地所設計」)、MEC Industry株式会社(以下、「MEC Industry」)は、2025年度のグッドデザイン賞において、まちづくり「グラングリーン大阪(うめきた公園サウスパーク等先行開業区域)」、集合住宅「ザ・パークハウス 等々力」など、合計16件受賞しました。

なお、「グラングリーン大阪(うめきた公園サウスパーク等先行開業区域)」は、地域社会の持続的発展や経済の活性化に特に寄与するデザインと認めるグッドフォーカス賞[地域社会デザイン]を受賞しました。

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■受賞プロジェクトの紹介                                     

1.まちづくり「グラングリーン大阪(うめきた公園サウスパーク等先行開業区域)」

                                ※ベスト100/グッドフォーカス賞

(三菱地所、大阪ガス都市開発、オリックス不動産、関電不動産開発、積水ハウス、竹中工務店、

阪急電鉄、三菱地所レジデンス、うめきた開発特定目的会社(出資者:大林組)、日建設計、

三菱地所設計、GGN

 大阪駅北側の貨物駅跡地で進む「うめきたプロジェクト」の第2期都市開発。ランドスケープファーストで公園の中にまちをつくる思想のもと、ランドスケープと建築が一体となる都市空間を生み出し、4.5haの都市公園を計画の中心に据え、パブリックなまちづくりが多様な人々を受け容れ、憩い・交流を生んだ。また環境配慮や社会貢献を目的とした企業連携でのイノベーション創出など持続可能性に着目したまちづくりであり、多様な面で国内外から大きな注目を集め、都市の新たな転換点としてシティブランディングにも寄与している。

(評価コメント)

大阪駅北側の貨物駅跡地の大型開発。特に評価されるのは、「公園の中にまちをつくる」という思想で、都心の一等地にありながら、大きなみどりの公共空間を中心に据えたことだ。中心の芝生広場の緩い傾斜などランドスケープデザインも丁寧にデザインされている。実際、開業してからは、多くの人が芝生の上や周辺の植栽の間で座ったり寝そべったりしてゆっくりと過ごしており、オープンスペースの価値が可視化されている。床を積むことで利益をだしてきた再開発に限界を感じる人が増えてきている中で、新たなまちの価値を提示したエポックメイキングな開発と言える。加えて、立体的な緑地やブリッジによって、都市を眺める視点を提供したことは特筆すべきことである。1993年に竣工して長らく孤立していた梅田スカイビルが大阪らしい視対象になっており、梅田スカイビルの布石が30年以上経って鮮やかに回収されているのもすばらしい。

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2.インキュベーションオフィス「0 Club」(三菱地所、DDAA

 「我慢をしないサステナビリティ」と「できるだけつくらないでつくる」をテーマに、環境負荷を最小限に抑えたインテリアデザインと家具制作に挑戦したプロジェクト。CO2排出量の削減または地球温暖化の影響への対処に焦点を当てた技術「Climate Tech」のスタートアップや研究者が集うコワーキンスグペース「0 Club」のデザインを通じて、既存の素材や廃材を最大限活用しながら、制約や不自由さを楽しみながら設計する方法を探った。

 内装はできるだけつくらずに既存を転用する等、既存素材の再利用と環境負荷の低いマテリアルを採用し、コンクリート型枠を再利用した椅子やテーブルを制作するなど、環境対策という制約を楽しむデザインを採用。自然と周囲の情報が入ってくるような情報共有を促すレイアウトとするなどの工夫をこらした。

(評価コメント)

本プロジェクトが掲げる「我慢をしないサステナビリティ」および「できるだけつくらないでつくる」という理念、そして環境負荷の低減を志向する姿勢には強い共感を覚えるものである。デザインには常に制約や条件が伴うが、それを乗り越える過程においてコンセプトはより力強さを獲得する。日本には、依然として十分に利用価値を有する建築ストックが数多く存在している。それらを丁寧に読み解き、活かし、魅力あるデザインへと昇華させる事例を示すことは、廃棄抑制に向けた能動的な行動を促す契機となるであろう。このような取り組みを広く公開し、多様な人々を巻き込みながら波及させていくことが、今後の持続可能な建築文化の発展に期待される。

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3.フリーアクセスフロア「WOOD FLOOR UNIT 3.2」(三菱地所、MEC Industry、乃村工藝社)

 建物の内部空間に国産木材を気軽に取り入れやすくするため、CLT(直交集成板)を使った木製フロアユニットを開発し、新築・改修を問わず大規模オフィスビルなどへ導入を想定。床一面に美しい木目が広がる高い意匠性と、様々な企業とチームを組み、工夫を凝らすことで簡単施工を実現。さらに高い炭素固定効果で地球環境にも貢献する。

 国産木材の活用を推進していく中で、日本国内では防耐火規制により構造利用したCLTを現しで利用することが難しく、また木材の内装利用は特注対応となることが多くコスト高になってしまう課題があった。本製品の開発目的は、誰でも簡単に取り入れやすい製品にすることで国産木材の利用量を増やすこと。それを通じて森林による炭素固定、水源涵養機能、災害防止機能などの維持・向上につながり、国内森林の好循環を生み出すことで、社会課題の解決にも貢献すること。本製品はCLTを空間の意匠として現すことができ、木の自然な空間を実現できる。パネル自体が仕上げ材として機能するように表面は金物が見えない特殊接合になっており、長年の利用で傷や汚れがついてしまった場合でも、表面研磨によって敷設時に近い状態を実現することも可能で、最も大事な「長く使う」というサステナブル視点も実現している。

(評価コメント)

近年、森林資源の有効活用や地方創生に貢献する建材として、CLTの普及や積極的な活用が見られるが、構造躯体・建材としてが主であり、量産としての製品はまた違った意味を持つと考える。製品としても仕上がり面に金物が見えない意匠性は他社製品との違いが明確であり、美しく、施工性の高さを実現した接合部の開発も素晴らしい。OAフロアに対してタイルカーペットなど以外の選択肢として、傷んだ場合も研磨しメンテナンスできるこの製品は、意匠面、木の豊かな質感という部分だけでなく、様々な点で存在意義がある。

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4.解体移設可能なリユース建築SLOW ART CENTER NAGOYA

(三菱地所、コマンドA、安井建築設計事務所、オンデザインパートナーズ、irodoriGraph Studio

 都市開発で生じる開発用空地によって途切れてしまう土地の文化や営みを、駐車場や仮設建築でもない解体移設可能な「リユース建築」と「スローアート」というプログラムにより、未来へ継承することを試みるプロジェクト。5年間の暫定期間後は、規模や形態を変えながら都市の空地をノマドし、新たな都市の新陳代謝を生み出す。

各都市の中心市街地では様々な都市開発が行われ、そのための空地が点在している。その活用として駐車場化による収益事業や、プレハブやコンテナを利用した仮設建築等での暫定利用が見受けられる。一方で仮設としてではない豊かな「まちの資産・風景」として建築を一定期間存在させることも重要である。これらの課題に対応するため、敷地や環境に負荷を与えずデザインの可能性を残し、かつ解体/移設可能なリユース建築こそがこれからの社会に必要であり、土地の文化や営みを継承し、新たな形の活動を生み出していけると考えた。

(評価コメント)

5〜10年程度の中期利用を想定し解体/再構築が可能なリユース建築によって、都市開発に伴う空地期間中もスローアートで土地の文化や営みを継承していこうとするプロジェクト。一時的な本設という考え方がユニークである。都市の暫定空地の利活用の事例は増えてきているが、そこに対する新たな建築(構法)とプログラムのセットでの提案により、可能性が広がるのは歓迎すべきことである。名古屋での取り組みを通して、リユース建築のさらなる可能性が見出されることを期待したい。

スクリーンショット 2025-10-14 154247.png<住宅事業グループ~22年連続受賞~>

5.賃貸集合住宅「ザ・パークハビオ SOHO 横浜関内」(三菱地所レジデンス)

 再開発が進む横浜市関内の傍ら、旧市街地に竣工した賃貸集合住宅「ザ・パークハビオ」シリーズ。本計画では、集合住宅開発の標準的な形式に対する挑戦として、より良い「住まい方」とまちの「地域性」の両立を目指した。 

 従来の画一的な住戸プランから離れ、開放的で多様な暮らしに応える空間構成を追求。

 また、このまちに息づく界隈性や風景の記憶を建築に取り込み、地域と住まいが自然につながる集合住宅のあり方を模索した。例えば、公開空地は歩道と一体化させ、通りに面する壁面には連続したガラスを採用。室内の木質空間の温もりがガラス越しにまちへと広がり、まちとの緩やかな関係性を築く。また、2階までの基壇部には、かつて周辺に点在していた貝塚に着想を得たデザインを採用。地域コミュニティにとって特別な意味を持っていた貝塚の記憶を建築に重ね、地層が立ち上がるようなファサードを構成した。ボルダリングウォールが印象的なワークラウンジ(1階)の一部は一般にも開放しており、共同住宅でありながら"地域のもの"としてあり続ける。

(評価コメント)

従来の集合住宅らしさを感じさせないモノリシックな外観が特徴的である。一見すると閉鎖的とすら感じさせる外観だが、内部プランは実に丁寧に設計され、無駄な廊下もなく、建具を開け放てばワンルームとしても使えるようなフレキシビリティも兼ね備えている。外観からは想像もできないほどに明るく開放的な空間は心地よく、住む人が楽しく生活を組み立てていくことのできそうな場となっている。また低層部の共用スペースが地域に開放されている点も、従来の集合住宅にはない素晴らしい試みである。今後は、地域インフラとしての役割も担っていくことになるのだろう。これからの集合住宅がモデルにすべき数々の試みがここにはある。

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6.集合住宅「ザ・パークハウス 等々力」(三菱地所レジデンス)

 等々力渓谷に位置し、東急大井町線に隣接する低層共同住宅。電車に乗った際、建物の裏側が景色として連続することに課題を感じた。あえて線路側に開口部を設け、線路と建物の中間領域に開放性を創出することで、車窓からの景色を意識した良好なまち並み形成に寄与することを目指した。

 本計画地を見ると、北側から線路・緑地・河川・建物と連続する稀少な立地であるが、区の管理地である線路脇の緑地は管理が行き届かず樹木が生い茂り人の往来はごくわずかなものであり、従前建物についても開口部が南側を主としていたことから、それぞれが分断されているような印象を受けた。そこで各要素を一体とした開放感のある空間を創出することで、車窓からの風景を臨む人、緑地を利用する地域の人、そして建物に住まう人それぞれがこの計画地の希少性を享受できるような計画を目指した。

(評価コメント)

敷地外である雑木林を整備し、河川、緑地、電車と広がる街全体の景観形成に寄与しようとした試みは高く評価できる。区との協議により、河川に太陽光が差し込むように雑木林を再生できたことは、そこに生息する動植物との共生という観点からも見習うべき取り組みであり、環境への貢献も大きい。敷地北側の景観をポジティブなものとして捉え、裏のない中廊下形式の平面計画を採用した点も優れている。再生した雑木林や河川の環境がより良い状態で維持され、地域の憩いの場として末長く地域の人々に親しまれていくことを願っている。

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7「リノベーション住宅における省エネの取組」(三菱地所レジデンス、エヌ・シー・エヌ)

 中古マンションを買い取り、リノベーションを施して再販売する際に、必要な箇所に適切な省エネルギー設備等を導入することで、ZEH水準または省エネ基準を確保する取り組み。また、お客様にその性能をわかりやすく説明するための独自の「省エネルギー性能報告書」を発行。

 中古市場では、リノベーションをしてZEH水準または省エネ基準にまで引き上げるのは難しいと思われており、普及していないのが現状。また、中古マンションは新築と比べて情報が少ない状態で販売されているため、お客様が中古マンションの「省エネ性能」を選ぶことができない。新築マンション事業者である三菱地所レジデンスがリノベーションの省エネ計算の先駆者であるエヌ・シー・エヌと連携し、「新築で当たり前に行っている省エネの取り組みを中古でも当たり前にしたい」と業界に先駆け取り組んだ。

(評価コメント)

これまで中古住宅は省エネ性能が数値化されず、購入者が性能を比較できないという課題を抱えていた。
長年にわたりマンションの供給に関わってきた強みを活かし、自社中古物件において、ZEH水準や省エネ基準を達成する取り組みを先駆けて実装した点で評価される。同時に成果を積極的にメディアや競合他社に公開している点も注目に値する。購入者にとっても性能を理解した上で、暮らしを選択できるのは大きなメリットである。今後、業界全体に普及が進むことで省エネ中古住宅が当たり前となり、住環境の質と脱炭素社会の実現の両立に貢献することが期待される。

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8.流通改革による日本の森林を守る取り組み「木の守プロジェクト」(三菱地所レジデンス)

 マンション事業での国産材活用が、日本の森林循環を促すものとなるよう、従来の流通経路を変革し「植林や育林など森の管理に必要な費用」を林業者に直接届ける取り組み。持続可能な森林資源をうみだす豊かな森の育成には「伐る・使う・植える・育てる」という循環が重要だ。しかし日本の林業は、長らく外国産材の使用が主流だったうえ、国産材の安定的な需要に恵まれず、森を適正に管理する充分な資金も確保できないという課題に直面してきた。現状から抜け出す一歩としてマンション事業者が林業者から木材を直接指定して購入する、これまでにない新しい形で連携。「植林や育林などに必要な費用」が林業者に直接届くことで、森林循環を促し、さらに、林業関係者が独自で販路を確保して自立することで、地域発展も望める取り組み。国産材活用が、確実に森林循環につながるものとして定着するまで、一時的な活動で終わらせるのではなく、林業関係者に根源的に向き合う必要があるとの想いで取り組んでいる。

(評価コメント)

マンション事業者が林業者と直接取引を行い、植林や育林に必要な費用を確実に届ける仕組みを構築した点は画期的である。従来割高な素材と見なされていた木材が、再造林費用を含んだ適正価格として認識されるようになったことも大きな成果である。さらに、大企業ならではのスケールを活かし、全国へと展開している点も意義深い。単なるCSRや一過性の活動ではなく、CO₂削減と森林循環を両立させる持続的な仕組みとして位置づけられており、その強い意志が伝わってくる。日本の森林資源を守る上で継続が望まれる活動だ。

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9The Warp: Regenerative Wood Design Series(三菱地所設計)

ドバイデザインウィーク2024に出展した、日本の伝統木工技術である継手と最先端の3D プリント技術を融合させた、木質3Dプリント造の茶室パビリオン。昨今、建材としての需要が高まる木、その製材加工の際に生じる木粉をアップサイクルした木質樹脂を用いた、約900 枚の軽量な曲面状パネルで構成されている。各部材は一般的な小包として空輸でき、釘や金具、接着剤を用いずに手作業で接合できるため、専門技能を必要とせず現地で短時間の組み立て・解体を実現した。モジュール式の設計によって多様な環境や用途に適応可能であり、持続可能な循環型社会の実現を目指した取り組みである。

(評価コメント)

汎用小型な3Dプリンターによる木質3Dプリントと伝統継手技術を融合することで、分散型・軽量・高精度・持続可能な建築として、美しい茶室が実現していることがすばらしい。組立解体もシステム化されており簡易で、建築は誰もが関われるものであるという思想も実践されている。

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10.キャプション by Hyatt 兜町 東京(平和不動産、三菱地所設計)

平和不動産が推進する日本橋兜町・茅場町のまちづくりの一環として整備された、木造ハイブリッド構造の都市型ホテル。客室外周部の柱・梁を木造化するにあたり、負担荷重や階数による必要耐火時間に応じて、現しの木間柱と木質耐火部材を使い分けることで柱の見付幅を統一し、外観に表出される美しい木フレームを実現。客室内部においても木柱・木梁を露出し、天井にはMEC Industryの「MIデッキ」を採用するなど宿泊者が木の温かみを感じられる空間を創出した。木の材質的特性に向き合い設計した、都市へ木の魅力を発信する木造中高層建築の先進的事例である。

(評価コメント)

ハイブリッドを含む木質構造を採用した中高層ビルの事例は、オフィス用途を中心として増加しつつあるが、旅行者向けの上質なホテルに採用された事例はほとんどない。日本に訪れる外国人観光客が目にする観光資源の多くは木造であるのにも関わらず、一部の老舗旅館を除いては宿泊場所でそれを感じることができないのはこれまで当然のこととされてきた。当作品は、木構造のフレームやスラブ型枠を内外に露出させ、ここに滞在する人々に欧米のホテルのスタンダードを持ちながら日本らしさを感じさせる表現を積極的に行っている。証券ビジネスマンのためにあった兜町を、時代の変遷に伴い魅力的に変貌をさせていこうとする事業主の一連の開発でもあり、ホテルのあり方、街の変化の仕方を含め、「はじめの一歩から広がるデザイン」としての期待が膨らむグッドデザインである。

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11.ニコン 本社/イノベーションセンター(三菱地所設計)

ニコンゆかりの地に、本社、R&D部門、一般公開のミュージアムを集約し、シナジーと先進開発機能の強化を図ったプロジェクト。1フロア約150×60mの広大なオフィスは、事務室とそれに挟まれる新たなコア形式「コミュニケーションフレーム」で構成。フレーム内には昇降機能やキッチンなど多目的空間を集約し、フロアを超えた社員の交流を促す。構造・設備・意匠の統合により実現した新開発のPC床システムや水平庇は、光学機器を原点とする企業にふさわしい「光の演出」を可能にする。設計監理に加えプロジェクトマネジメントも担い、建築やランドスケープからミュージアム、映像演出、食堂のあり方に至るまで、発見・交流・体験の場を一体的に計画した。

(評価コメント)

研究開発と本社機能をひとつにまとめ、社員や地域、関連企業までが交流できる場を目指した建築である。帯状のボリュームをずらしながら積層させた形は、周辺環境への配慮とともに広場やテラスを生み、開かれた印象を与えている。内部では「コミュニケーションフレーム」と呼ばれる空間が働く人々をつなぎ、偶然の出会いや活動の広がりを促している。設備や構造の工夫を意匠と一体化させることで、快適性と機能性を兼ね備えた点も特徴的である。製品づくりで培った「デザインと機能の統合」という同社の姿勢を、空間全体で体現した新しいワークプレイスといえる。

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12.バイトダンス成都(三菱地所設計)

IT 企業が集積する中国・成都の天府新区、その都市軸である天府大道沿いのラストピースとなるオフィスパーク計画。セキュリティ重視のため閉鎖的になりがちなオフィスを地域に開き、周辺環境との調和のもと、地域の未来をけん引するにぎわいの中心の創出を目指した。低層の既存棟に並列させたふたつの新築棟は、段状に高さを変化させ、都市軸に沿うスカイラインを形成する。3階に設けたスカイロビーから新旧各棟をブリッジで結び、ホールやビジターセンターへと直接アクセスできる立体的なネットワークを構成した。建物頂部に設けられた高さ24m4層吹き抜けの社員交流スペースは、発展を遂げる本地域を照らすシンボルとなる。

(評価コメント)

中国で最も影響力のあるメディアプラットフォーム「TikTok」の成都本社拠点のプロジェクト。シンプルで明快な建築形態は、時代性とテクノロジー感を表現。特に、最上部の角に位置する4層吹き抜けの屋内パブリックスペースが非常に目を引く。サンクンガーデンは打ち合わせや休憩のための屋外スペースとして機能し、建築デザインの独自性をより一層高めている。

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13.プレミスト南平台(大和ハウス工業、三菱地所設計)

明治期より政財界の要人邸宅街として知られる閑静なエリアに建つ、全22 戸の集合住宅。周囲の緑を映し出す「1 枚のガラス」で公私の境界を構成し、敷地内外の緑地の重ね合わせ、濃淡、距離で視線を制御。連続する大開口からの風景の取り込みで居住空間の豊かさを実現した。擁壁は、石の厚みと種類を変え幾何学的に加工することで、上部の樹木をより際立たせる。富裕層向け集合住宅にありがちな閉鎖的な構えに対し、豊かな緑と石垣が織りなす地域特有の風景を継承し、住み手だけでなく地域に暮らす人びとの「共有資産」となり得る佇まいを追求した。

(評価コメント)

富裕層向けの集合住宅にありがちな、過度なプライバシー配慮や、高価な材料の使用、過剰な表層デザインといった傾向に対し、あえて異なるアプローチをとったデザイン姿勢が素晴らしい。全体として高級集合住宅につきまとうイメージを刷新し、地域の景観とも見事に調和したデザインとなっている。内部プランも、場所に応じて多彩なバルコニーがデザインされ、各々のライフスタイルに応じた個性豊かな住空間が実現されている。設計者の誠実さが随所に伺える集合住宅である。

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14.フロントプレイス千代田一番町(三菱地所設計)

コロナ禍を経て問われる出社の意義や、働き方・価値観の多様化に応えた中規模テナントオフィスビル。1 階をカフェやベンチを設けたオープンスペースとして地域に開放し、さまざまな人びとが行き交う空間としてまちとのつながりを創出。オフィスフロアには腰掛けからカウンターデスクまで高さを変える出窓を設け、テナントの個性を外観へ表出させた。フロア運用のフレキシビリティを高めながら、気流感や温度ムラを抑える空気式輻射空調やDALI 制御・人感センサによる照明を導入。テナントオフィスビルとして、WELL V2 基準におけるWELL Core予備認証 プラチナを初取得し、これからの当該ビルディングタイプのあり方を示すモデルケースとなった。

(評価コメント)

均質化しがちなテナントオフィスのあり方を問い直し、街と働く人をつなぐ新しい仕組みをつくった建築である。フロアごとに異なる形の出窓は、窓際をベンチやデスクとして活用でき、働く姿が街へにじみ出る外観を生んでいる。窓際から活動が広がることで、利用者が場所への愛着を持ちやすい点も評価できる。さらに坂のある一番町の地形を生かし、高低差を利用した外構空間やカフェを開放する設えによって、通りに賑わいと人の居場所をもたらしている。オフィスをただの箱ではなく、街に開かれた活動の舞台として再構築した好例である。

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15.新青山ビル・リノベーション(三菱地所設計)

1978年に三菱地所の設計で竣工した3 路線の地下鉄駅に接続する都心型複合施設「新青山ビル」を、今後も「まちをリードする」存在であり続けるためにアップデートしたプロジェクト。低層階と高層オフィス階の共用部をリニューアルするとともに、ビル就業者向けのシェアワークラウンジを新設することで「現代の働く場」へと再構築した。老朽化していた中庭を地域に開かれた広場へと刷新し、営業を継続しながら地下店舗街のデザイン改修を行うなど、ハード・ソフトの両面から「地域とつながる」建築の役割を付加した。先達の設計に見られる特徴的なコンテクストを読み取り、それをビルの「様式」として創造的に扱うことで歴史との共作を試みた、建築を未来へとつなぐ改修である。

(評価コメント)

「青山ツイン」の愛称で親しまれてきた新青山ビルを、街と未来に開かれた存在へと更新したリノベーションである。中庭広場は誰もが立ち寄れる通り抜けの広場へと生まれ変わり、バリアフリー化や外へ開いた階段により、これまで閉じられていた空間が街に開放された。新設された共用ワークラウンジでは、近隣書店と連携した「ブックマウンテン」やランニングステーションを備え、働く人々の余暇や関心を地域とつなげている。既存ビルに散見された"円"や"弧"の様式を受け継ぎつつ現代的に介入することで、歴史との共作を試みた点もユニークである。部分的かつ重点的な改修により、これからも長く街をリードし続ける建築としての姿を描き出している。

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16.長崎スタジアムシティ

 (ジャパネットホールディングス、リージョナルクリエーション長崎、三菱地所設計、

環境デザイン研究所、安井建築設計事務所、竹中工務店、戸田建設、松尾建設)

民間主導による地域創生のプロトタイプとなることを目指して誕生した、スタジアム・アリーナ・ホテル・オフィス・商業施設・駐車場など、多様な機能を備えた延床面積約18万㎡の超複合建築「長崎スタジアムシティ」。未曽有のプロジェクト実現に向け、三菱地所設計はCM業務を担当。各工区調整・コスト管理を担った。各用途は立体的に展開されるコンコースによって融合し、どこからでも長崎の豊かな自然を感じられる開放的な配置計画とするとともに、各用途の高い相乗効果と新しい価値体験を生み出している。コンコースやスタジアムの座席は日常的に解放され、観光客のみならず、地域の人びとが集い、親しまれる施設となった。

(評価コメント)

造船所の跡地を活用した、民設民営のプロジェクトである。スタジアム・アリーナ・ホテル・商業施設などが極めて高密度に組み合わさった複合施設で、事業を成立させるためにやや詰め込まれた印象とは裏腹に、実際の空間には浦上川や稲佐山への抜け感が工夫されている。鉄道や道路に囲まれた厳しく狭い土地ではあるが、試合がない日でも閉じられることはない。光と風が抜けて、開放されたエリアも充実しており、高密度な複合がむしろ全体の魅力につながっている。長崎の日常の姿を発信する拠点になるだろう。

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<参考> 

三菱地所グループ グッドデザイン賞受賞実績

1998年度  「クイーンズスクエア横浜」

2000年度  「丸の内仲通り」

2001年度  「国立室戸少年自然の家海望台」

2003年度  「丸の内ビルディング」

2004年度  「M.M.TOWERS」「日本テレビタワー」「品川セントラルガーデン」

2005年度  「ザ・フィネスト上野毛パークハウス」「洗足池スタイルハウス」「フォレスト南平台」

       「ザ・ハウス南麻布」

2006年度  「井の頭公園パークハウス吉祥寺南町」「追手門学院大学守衛所」

      「明治安田生命ビル街区再開発」

2007年度  「セントラルガーデン・レジデンス」「ザ・ステージオ」

      「読売北海道ビル」「オンワード仙台支店」「国際文化会館」

      「横浜ベイクォーター」「新丸ビル」

2008年度  「M.M.TOWERS FORESIS」「CAPITAL MARK TOWER

      「成蹊大学情報図書館」

2009年度  「本郷パークハウス ザ・プレミアフォート」「The Kitahama

2010年度  「パークハウス フォレストリエ」「パークハウス 木々 津田沼前原」

       「パークハウス瀬田一丁目」「スタイルハウス目黒緑が丘」

      「ミッドオアシスタワーズ」「パークハビオ駒沢大学」「soleco(ソレッコ)」

2011年度  「パークハウス吉祥寺OIKOS」「パークハウス江ノ島」「豊洲フロント」

      「大鉄工業本社ビル」「成蹊学園キャンパス」 

2012年度  「ザ・パークハウス 茅ヶ崎東海岸南」「ザ・パークハウス 六番町」

      「5つのアイズ」「スマイラボ」「八事山興正寺 境内整備計画Ⅰ」

2013年度  「ザ・パークハウス 池田山」「東洋文庫」「熊谷商工信用組合本店」

2014年度  「丸の内仲通り」「MARK IS みなとみらい」「『はらくっつい東北』シリーズ」

      「ザ・パークハウス 代官山レジデンス」「ザ・パークハウス 渋谷美竹」

       「ザ・パークハウス 戸塚」「ドレッセ世田谷桜レジデンス」

      「スーパータックフィットMNT

      「全館空調エアロテックのダクトレイアウトシステム」「制震賃貸住宅エムアセット」

2015年度  「ザ・パークハウス グラン 千鳥ヶ淵」ベスト100受賞

      「マンションのランニングコストの見える化『マンション家計簿』」

      ベスト100受賞(グッドデザイン・未来づくりデザイン賞受賞)

      「築古ビルのバリューアップ転貸事業『Reビル』」ベスト100受賞

      「ザ・パークハウス グラン 三番町」「ザ・パークハウス 上鷺宮」

      「ザ・パークハウス 追浜」「SKYZ TOWER&GARDEN

      「パークハビオ赤坂タワー」「西新宿 CLASS in the forest」「プレーン・ルームズ」

      「そなえるカルタ」「BIO NET INITIATIVE」「脇浜寮」

2016年度  「ザ・パークハウス 晴海タワーズ」「賃貸物件の無人内覧サービス」

      「遊休資産となった社宅再生転貸事業」「新築分譲マンションのための研究開発手法」

      「渋谷董友ビル」「本社ビル+企業ミュージアム『安川電機みらい館』」

      「『オーダーグラン』駒沢ステージ2ホームギャラリー」

2017年度  「ザ・パークハウス グラン 南青山」「ザ・パークハウス 市谷甲良町」

      「ザ・パークハウス 東陽町レジデンス」「プレイスヴィラ喜多見」

      「BAYZ TOWER&GARDEN」「集合住宅向けPC工法のシリーズ化」

      「空気の価値化『新マンションエアロテック』」「住まいの中に、木の小部屋『箱の間』」

      「大手町フィナンシャルシティ グランキューブ」「星のや東京」

2018年度  「ザ・パークハウス 西新宿タワー60」「蘆花公園 ザ・レジデンス」

      「ザ・パークハウス 中之島タワー」「ザ・パークハウス 新宿御苑」

      「『そなえるドリル』ドナタデモプロジェクト」

      「『各住戸玄関前宅配ボックス』を利用した集合住宅における新しい宅配システム」

      「グリーン付家具『ボタニカルファニチャー』」「ONE ORDER 浜田山ホームギャラリー」

      「木造住宅最高レベルの高遮音床」「旧名古屋銀行本店ビル(THE CONDER HOUSE)

      「グランモール公園再整備」「横浜ゴム株式会社 研究開発センター第二ビル」

      「X-PRESS有楽町」

2019年度  「ザ・パークハウス 五番町」「ザ・パークハウス 桜坂サンリヤン」

      「ザ・パークハウス あざみ野一丁目」

      「Under construction (Un.C./アンク)

      「幕張ベイパーク クロスタワー&レジデンス」

      「連続両面大開口と国産100CLTスラブによる深い軒下空間を有する千里・新宿モデルハウス」

      「KOJIMACHI TERRACE

      「ヒューリックスクエア東京」

2020年度  「ザ・パークハウス 神戸タワー」「hitoto 広島 The Tower

      「グランドメゾン浄水ガーデンシティ フォレストゲート」

      「太陽光でお湯を沸かすZEH-Mスキーム『ソレイユ』」

      「一般社団法人幕張ベイパークエリアマネジメント(B-Pam)」

      「丸の内15丁目プロジェクト」

      「CIRCLES ~人の輪ができる、まちと繋がるオフィス~」

      「CLT PARK HARUMI」「福島テレビ株式会社本社」「Medicha (メディチャ)

2021年度 WORK×ation Site 軽井沢」

      「型枠木材のトレーサビリティ認証スキーム」「ザ・パークレックス 大濠公園」

      「瀬田の杜 Garden & Terrace

      「天然木ノンビス工法外装材」「大手町ビル・リノベーション」

      「LIXIL WINGビル HOSHI

      「明産霞が関ビル」

2022年度  「ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園」「ザ・パークハウス 鎌倉」

       「ザ・パークハウス 新浦安マリンヴィラ」「グランドメゾン新梅田タワーTHE CUBE RESIDENCE

       「アントグループ本社」

2023年度  「アナザー・ジャパン」「3rd MINAMI AOYAMA」「天神・因幡町通り地下通路」

       「ザ・パークハウス 自由が丘ディアナガーデン」「チャームプレミア グラン 御殿山」

       「シエリアシティ明石大久保 コミュニティHUB」「外装用炭化コルク」

       「MEC Industry鹿児島湧水工場」「大手町観音堂」「Slit Park YURAKUCHO

       「ホテルオークラ京都 岡崎別邸」「成徳幼稚園」「メゾンカルム日本橋馬喰町」

       「ENEOSマルチモビリティステーション」「ふかや花園プレミアム・アウトレット」

2024年度  「IKEBUKURO LIVING LOOP」「ベネチ庵/アラビ庵」「MUFG PARKLIBRARY」「田町タワー」

       「ザ・パークハウス グラン 神山町」「ザ・パークハウス 南麻布」

      「ザ・パークハウス 京都河原町」  

       「グランドメゾン浄水ガーデンシティ セントラルフォレスト」

       「レジデンシャル青葉広瀬川」 

2025年度  「グラングリーン大阪(うめきた公園サウスパーク等先行開業区域)」「0 Club

      「WOOD FLOOR UNIT3.2」「SLOW ART CENTER NAGOYA

      「ザ・パークハビオ SOHO 横浜関内」「ザ・パークハウス 等々力」

      「リノベーション住宅における省エネの取組」

      「流通改革による日本の森林を守る取り組み‐木の守プロジェクト」

      「The Warp: Regenerative Wood Design Series」「キャプション by Hyatt 兜町 東京」

      「ニコン 本社/イノベーションセンター」「バイトダンス成都」「プレミスト南平台」

      「フロントプレイス千代田一番町」「新青山ビル・リノベーション」「長崎スタジアムシティ」

以 上

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