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   2023年度グッドデザイン賞 三菱地所グループ全体で15件受賞 

三菱地所グループ21年連続の受賞

三菱地所グループの三菱地所株式会社、三菱地所レジデンス株式会社、三菱地所ホーム株式会社、MEC Industry株式会社、株式会社三菱地所設計、三菱地所・サイモン株式会社、は、2023年度のグッドデザイン賞において、学生経営×地域産品セレクトショップ「アナザー・ジャパン」、集合住宅「ザ・パークハウス 自由が丘ディアナガーデン」、屋外空間デザイン「大手町観音堂」など、合計15件受賞しました。

なお、「アナザー・ジャパン」は、審査委員一人ひとりが個人的なお気に入りや注目した受賞デザインを選び、紹介する「私の選んだ一品」にも選出されました。

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グッドデザイン賞は、三菱地所グループとして、1998年度に「クイーンズスクエア横浜」で初めて受賞。2003年度からは21年連続の受賞となります。

 三菱地所グループは、今後も「人を、想う力。街を、想う力。」というブランドスローガンのもと、まちづくりを通じて社会に貢献してまいります。

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▲ザ・パークハウス 自由が丘ディアナガーデン

■受賞プロジェクトの紹介                                     

1.学生経営×地方創生の活動「アナザー・ジャパン」(三菱地所・中川政七商店)

東京一極集中が続く日本で、若い世代と地域を結ぶ中長期プロジェクト。全国出身の学生が東京駅前の地域産品セレクトショップを舞台に、地域産品の仕入れ・収支管理・プロモーション・接客販売というショップ経営の一連を担い「もうひとつの日本」を生み出します。第1期店舗は、日本全国を「北海道・東北」「中部」「関東」「近畿」「中国・四国」「九州」の6ブロックに分け、2か月ごとに特集地域を切り替えました。三菱地所による「TOKYO TORCH」を舞台に、中川政七商店の製造小売事業および地域活性事業で培ったノウハウを活かした共同事業。アナザー・ジャパンが目指すのは、郷土愛と経営力ある若い世代を育て、東京から日本各地への価値還元の仕組みづくりです。

(評価コメント)

ある教育学者の研究によると、人の記憶は、読んだ経験で10%しか定着しないにもかかわらず、自ら行ったことであれば90%が定着するそうだ。このプロジェクトは、実際に経験することで地域との強い記憶を若者達に植え込んだことになる。 参加した学生がこれから大学を卒業し、社会の中で生きていく時にも、この強い記憶はきっと若者に作用し、結果、社会に還っていくはずだ。わずかずつでも社会の目線を地域と繋げていこうとするこのプロジェクトは、短期よりも長期できっと力を発揮する。これからの事業の継続と、関係人口をこえて実践人口の増加に寄与してくれることを切に期待している。

(私の選んだ一品)

審査を離れ、審査委員一人ひとりが個人的なお気に入りや注目した受賞デザインを選び、紹介する企画にて選出されました。

【審査委員名】

水野 祐/弁護士

【コメント】

地域産品のセレクトショップ自体は珍しくなくなりましたが、このプロジェクトが実践する学生を主体とした新しい教育や地方創生の手法やあり方、そしてビジネスとの両立の塩梅、それらを実現する丁寧な取り組みが「美しい」と思いました。応援しています。

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2.オフィス・商業施設「3rd MINAMI AOYAMA」(五光、三菱地所、三菱地所設計)

 次世代のワークスペースとして新しい働き方を可能にするオフィスビルの計画。ただ働く場所としてのオフィスではなく、特徴的な外観にも寄与する開放的なアウターバルコニー、建物の外部/内部をゆるやかに繋げるインナーバルコニーを取り入れ、既存の働き方に捉われない、オンとオフがシームレスに繋がる「サードプレイス」を創出。

 外構部には、青山通りと外苑西通りを繋ぐ小路のような貫通道路を整備し、敷地奥に緑豊かなポケットパークを配置。地域の方の憩いの場にもなり、南青山三丁目交差点を中心とする回遊性へ発展するような、歩いて楽しいまちづくりに寄与することを目指しました。

(評価コメント)

環境への配慮が必須となった現代において、窓を安心して開けられるようにするためだけでなく、実質的な床面積の損失を最小限に抑えつつ空間を広々と感じさせるための貴重な要素として、屋外廊下やバルコニーの評価が高まっている。このようなトレンドの中で、本プロジェクトも位置づけられだろう。奥行きのあるバルコニーは様々なアクティビティの展開が期待できるし、バルコニーを各階で重ねずに、上部に適切な間隔を持たせたデザインは、広々とした開放感を演出する一助となっていると思われる。ただし、西日対策が不十分に見える点については懸念がある。

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3.地下通路「天神・因幡町通り地下通路」(西日本鉄道、福岡地所、三菱地所、yHa architects

 天神一丁目交差点と福岡市役所西交差点を結ぶ因幡町通りの地下に民間3事業者が協力し整備した約140mの公共地下通路。隣接する施設をバリアフリー動線でつなぐことで、福岡・天神の歩行者ネットワーク強化に寄与してまいります。

 これまで45年以上福岡市民に親しまれている天神地下街と平行に新設された本地下通路は、天神地下街の特長的なアーチ天井やリズミカルな光だまりのデザインを継承しながらも、現代的な木質地下空間を創出しています。不燃加工した福岡県産杉材によるルーバー天井や照明制御技術などの最新技術を活用し、歩いて楽しい空間となるようアーチ天井による立体的な変化や柔らかい光で水面のようなゆらぎを表現した、柔らかさや温かさを感じさせる地下空間です。

(評価コメント)

さすが天神と言わしめる地下空間だろう。木質ふう材料ではない本物の地元木材を活用されながら、地下だからこそ実現可能な、歩いてみたくなる通路空間だ。天神の格調と風格を地下空間から創出することは大変意義深く、手間とコストを掛けられた関係者には敬意を表したい。

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4.集合住宅「ザ・パークハウス 自由が丘ディアナガーデン」(三菱地所レジデンス、モリモト)

 自由が丘の1,000坪超の屋敷跡地に緑豊かな集合住宅が誕生しました。私邸ゆえ守られてきた稀有な自然環境について、計画地の歴史や豊かな自然を記録・承継することを目的に、着工前に生態系等に関する調査を行い、調査結果は地域の財産として活用されるよう公共施設に寄贈しました。植栽計画においては、調査結果も踏まえ既存樹木を保存したほか、絶滅危惧種を含む一部の植物については表土と共に外部にて保管し、竣工後に再移植を行っています。引き渡し後には、管理組合を主体として生態系のモニタリングを継続し、植栽の効果的な維持管理等について専門家を交え検討していく体制を整備することで、企業が目指す生物多様性保全の価値をエンドユーザーに共有していく仕掛けを創出しました。

(評価コメント)

計画地の生態系について、専門家を交えた調査、記録、保全、竣工後のモニタリングまでと時系列で真摯に向き合った事例である。事業者は生物多様性保全を目標に、他の分譲マンションとともに面で生態系を守っていく目標をかかげ、地道な保全活動を行なっている。1000坪超という都心の一等地での稀有な環境を守り後世に引き継いでいくことは、入居者のみならず地域住民にとっても大きな意義がある。今後は周辺住民にもより開いた場所をつくり、一緒に環境を享受できれば、さらに地域の価値を高められるはずである。日本を代表する企業として、「BIO NET INITIATIVE」の取組みをさらに発展させていただきたい。

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5.老人ホーム「チャームプレミア グラン 御殿山」

(三菱地所レジデンス、チャーム・ケア・コーポレーション、日建ハウジングシステム)

 緑豊かで閑静な街並みの続く坂道の先に向かい合って建つ「チャームプレミア グラン 御殿山」「チャームプレミア グラン 御殿山弐番館」。まちを活かし、ひとを繋ぐ新たなシニアレジデンスです。

 本計画は、公道沿いを植栽によるセキュリティラインとすることで街並みに対して隔たりをつくらず、またガラスを多用し夜間はまち明かりにするなどの工夫により、視覚的にも物理的にもオープンな造りとし、緑豊かな新たな風景を創りました。

 また、ご入居者の快適な暮らしを実現するために、居室プランは22タイプのバリエーションをご用意し、共用部には、通りに面した開放的なサロン、大画面モニターを備えるリラクゼーションルームなど、ご入居者に愉しんでいただけるスペースを充実させました。ラウンジと面した3層吹き抜けは、日光が降り注ぐ天窓や、外の風を取り込める風力換気窓や重力換気を採用することで、建物内でも自然を感じられる居心地の良さを追求しました。

(評価コメント)

多くの高齢者介護施設は一般的に、建物の外観でそれと判ってしまう場合が多い。限られた予算で建設されることが要因だろう。御殿山は東京でも屈指の高級住宅街であり、それに相応しくこれほど緑と光に溢れた高齢者介護施設が存在することは高齢者にとって新しい夢だろう。既存樹木や地形に配慮し、緻密かつ自由度の高い空間設計は高く評価されるべきだろう。

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6.集合住宅「シエリアシティ明石大久保 コミュニティHUB

(関電不動産開発、三菱地所レジデンス、JR西日本不動産開発)

 「住みたい・住み続けたいまち」を目指し、官民一体となり街づくりを続けてきた明石市JR大久保駅南地区の最終街区に創造する総810世帯の大規模集合住宅「シエリアシティ明石大久保」。その中心に位置する共用棟「コミュニティHUB」は、主要構造部をすべて木架構で構成し、準耐火建築を要求される本建物の木部現し部分には「もえしろ設計」を採用。内部空間も可能な限り本物の木で造ることにこだわり、木の香りとぬくもり、陽光を享受できる心地よい時間を生み出す、カーボンニュートラルに資する木造共用棟が実現しました。

 また、本共用棟では、マンション居住者の様々なコミュニティ活動のほか、地域にも開かれた学童保育運営や多世代に向けた地域開放型イベントを定期開催することで、マンション居住者だけでなく地域住民とのふれあいの場を設け、地域コミュニティ形成に寄与しています。

評価コメント)

大規模分譲住宅が3棟建ち並ぶL型の敷地の中心に設けられたコミュニティ施設であり、木造の大庇が印象的な外観をもつ建築である。

一般的にこのような施設は、集合住宅の住民のみのための共用施設として計画されることが多いが、本件は地域住民にも開かれた運用がなされており、地域を巻き込んだ交流を支える拠点として活発な利用が期待できる施設である。大庇のデザインがやや大仰ではないか、共用施設としての規模が住戸数に対して適切か、などいくつかの点については議論の余地があるが、これから前庭やコミュニティガーデンなどの外部空間も使いながら、多様な活動が展開されていくであろう。 誰もが気軽に立ち寄ることができ、活動の輪、交流の輪が広がり、成熟して、地域コミュニティが持続していくことを期待している。

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7.サスティナブル外装材「環境負荷が低いコルクの端材を活用した、重厚感と自然の醍醐味を両立する

  『外装用炭化コルク』」(三菱地所ホーム、IWS

ワインのコルク栓製造過程で出る端材を粉砕・加熱し、自ら分泌される成分で固めた、接着剤未使用で無塗装の外装材です。都市部でも採用できるよう、45分準耐火建築物で使用可能な施工方法を開発しました。『外装用炭化コルク』は断熱性・耐候性が高く、吸音効果や調湿効果も期待でき、吸水量は御影石と同程度のため苔や藻が発生しにくいという特徴があります。ワインのコルク栓の高さに合わせた50㎜の厚みは、ソリッドでありながら材自体は多孔質で、柔らかさ、温かみを感じさせます。

無塗装のため個体差や環境による経年の退色が予測できないものの、自然に沿った多様な退色は各邸の唯一無二のストーリーであり、住み手の愛着に繋がります。多彩な退色を繰り返して最後は樹皮の黒い色に戻る等、想像を超える自然の変化は、住み手や近隣の方との会話を生み、天然素材の醍醐味や自然の温もりを味わうことに繋がります。

(評価コメント)

コルク素材の新しい利用を考えて開発実装し、自然素材の外壁のバリエーションを増やしたところが評価できる。多くの建物の外装材は窯業系であり、一部のリサイクルして活用する事例を除きその多くは解体された後に埋め立て処分されていると思われる。この外装用炭化コルクは接着剤未使用で固めた自然素材でできており、リサイクル時のコストも安いと予想される。

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8.工場「MEC Industry 鹿児島湧水工場」(三菱地所設計、MEC Industry、大豊建設)

 MEC Industry鹿児島湧水工場は2022年に本格稼働を開始した国産木材加工工場です。湧水町は過疎化が進む人口9千人ほどの小さな町ですが、働きやすい工場環境をつくることで、地域の方々が積極的にここで働きたいと思い、その結果として地域の経済に貢献し、地域に愛されるような、『地域と共生する新しい工場のあり方』を目指しました。

 広大な工場では多職種の従業員が広範囲な場所で作業するためチームの一体感が生まれづらいといった課題があります。そこですべての従業員が利用する動線を集約して「木の道」として計画し、その道沿いに事務所や食堂を計画することで、自然に顔を合わせられる関係性を作り出しました。中心となるのは大階段のある吹き抜け空間です。多面体構成の大壁面への杉の無垢板材やスチール手摺に編み込むように取り付けた化粧角材など、多様な木製品をひとつの空間に統合し、全員が日常動線として使用するこの空間が、社の理念「未来と共に興す」を体現する象徴的空間となるようデザインしました。

(評価コメント)

MEC Industry(株)鹿児島湧水工場は、従来の産業環境を一新する。過疎化が進む湧水町にある同工場は、快適な作業スペースの提供や女性の就業率の向上など、地域との共生を目指している。このプロジェクトのユニークな特徴は、同工場の木材製品をデザインに取り入れたことである。これにより、作業者と自分たちが作った製品との間に実体的なつながりが生まれる。工場のレイアウトでは、オフィスとカフェテリアをあえて動線に組み込んだ「木の道」を通じて団結と交流を促進し、従業員間の交流を促す。中央の吹き抜けは、さまざまな木製品で飾られた大階段が中心的な機能を果たしている。労働者の経験とコミュニティの統合を優先することで、この工場は産業界で独自の存在感を示し、人を中心とする建築の先駆者となっている。

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<設計監理事業グループ>

9.屋外空間デザイン「大手町観音堂」(三菱地所設計)

 大手町ビルの屋上には1958年の竣工以来、まちやビルの人々を見守る観世音菩薩像が祀られています。超高層ビルへの建替えではなく、大手町ビルを次の時代に繋ぐ新たなリノベーションが行われ、閉鎖していた屋上も一般に開放することになりました。その中心にある観音像のまわりに多くの人が集い憩う場所となる「大手町観音堂」を設えました。

 観音像は、約1.4kmにわたり真っ直ぐに伸びる丸の内仲通りの街の軸線と、長さ200m以上ある大手町ビルの軸線が交差する中心に祀られています。この軸線の中心をシンメトリーな土壁で囲い、観音堂として設えました。土壁のつくる暗い闇と開かれた明るい光の陰影が心静かに祈りを捧げる場所となります。入口には幔幕を設えて季節ごとに吹く風をやさしくつかまえ、超高層ビルに囲まれた都心の喧騒の中にある風や陽の光といった微かな自然をとらえます。

(評価コメント)

日本のビルの屋上は、昭和が生み出した貴重な公共空間だ。木造ではできない広い屋上は当時、目新しく、また狭いとされた日本の国土の中で、希望をもって迎えられた。そして、そこには平安を願う祠や鳥居もあったりするのである。長く閉鎖されていた屋上を一般に開放し、観音堂を整備した本作は、そんな屋上の公共性を捉え、適切な手法で蘇らせている。江戸の伝統のようなステレオタイプに寄せるのでもなく、目立つことだけを狙うのでもなく、現在の日常にフィットする爽やかなデザインの賜物である。

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10.街区・地域開発「Slit Park YURAKUCHO」(三菱地所設計、オープン・エー、東邦レオ)

 ビジネス、劇場、アート、ショッピングでにぎわう有楽町エリアの中心に位置する新国際ビルのオフィスエントランスと裏路地の小さな改修です。まちのにぎわいの中心である丸の内仲通りからビルや裏路地を通り抜ける横丁のような「小路」をつくりました。多様な来街者が自由に回遊して出会い、時間を過ごす公園のような居場所をつくる試みです。

 境界線を超え「つなぐデザイン」を心掛けました。通りの舗装材を引き込み屋内は屋外の材料で仕上げ、屋外には屋内的な家具を置き、開放的な木製建具を開け放ちまちと建物をつなぐ小路をつくりました。まちの歴史や周辺エリアとの関係性を見つめる都市デザイン、建築の空間デザイン、ライフスタイルを語る企画デザイン、ひとの振る舞いを喚起する家具や植栽デザイン、音楽やドリンクで交流を誘う運営デザインといった異なる視点を持つデザイナーが集まり、互いの領域を超えてアイデアを重ね合わせるようにデザインしました。

(評価コメント)

以前、国際フォーラムで開かれたアートフェアのユニークヴェニューとして賑わっていたこのSlit Parkを訪れたことがあった。訪れるというより吸い込まれたのである。硬質でオフィシャルな丸の内の街ももちろん魅力的で楽しいのだが、アンオフィシャルな横丁のような雰囲気は、この街に新しい人種を呼び込んで来るのではないか、という期待すら感じた。つまり、ただの裏路地なのではなく、丸の内らしさを持った裏路地なのだ。東洋医学の鍼治療のようなこの手法が大規模開発を推進してきた丸の内で示されたことの意味はとても大きいのではないか。

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11.ホテル「ホテルオークラ京都 岡崎別邸」(三菱地所設計、乃村工藝社)

 京都岡崎エリア、丸太町通り沿いの真宗大谷派岡崎別院の隣地に計画された、計60室のスモールラグジュアリーホテル。通り、まち、自然と調和し、寺社に隣接する敷地の特徴を生かした計画としました。

 境内前面に広がるファサードは、この場所の背景となる東山の山々や周囲の寺社と調和するよう、勾配屋根の持つ水平性と、簾(すだれ)のような揺らぎを持つルーバーで構成しました。エントランスから入ると、雁行しながら緩やかに連続する共用部から、岡崎別院庭園に溶け込むかのようにデザインされた、緑豊かな庭を一望することができます。西陣織や茶筒、竹の簾虫籠、京金網、木工芸といった、建築内装に取り入れられたさまざまな伝統工芸は、京都の若手後継者ユニット「GO ON」によるもの、さまざまなアートピースが散りばめられたホテル全体を、地域の新たな価値として次代へとつないでいくことを提案しています。シンプルで気品のある美意識と素材の力で満たした空間を意匠の核とした建築です。

(評価コメント)

古都京都に美しいホテルが誕生した。 オークラという日本の誇るブランドにふさわしい、オーセンティックでシックなデザインである。 日本の、そして京都の伝統的な美しさを知り尽くしたうえで、外国人が解釈しなおしたものとは一線を画し、オーセンティックな中にやわらかなモダンさを内包したデザインは、非常に知的である。 伝統工芸をアートとしてだけでなく、内装のレベルにまで昇華した手法は、日本の美を次代へと継承する上でも意義深い。 また地産材の利用など環境に配慮している点も高く評価する。

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12.幼稚園「成徳幼稚園」(三菱地所設計、東京成徳学園)

 都内住宅地における「居ながら工事」による幼稚園の建て替え。住宅が近接する地域ではプライバシーの観点から閉鎖的なインターフェースになることがありますが、当敷地の魅力を「時間をかけて形成された地域の生活環境そのものが、教育の貴重な資源」であるととらえ、本計画では、住宅の庭先や路地、僅かな空地などの周辺の生活環境と幼稚園の活動が互いに垣間見え、子どもの教育環境と地域が程よい距離間を保ちつつ、開いた関係性を構築することを目指しました。

 保育室は角に柱や壁がない開放的な空間構成として、視線が通り、子どもが周囲との多様なつながりを感じられる環境としています。園舎と住宅の間に創出した新たな園庭が、緑豊かな地域の景観となり、日照環境の向上にも寄与しています。

(評価コメント)

住宅地に隣接する幼稚園の建て替えにあたり、地域の生活環境と園舎の教育環境の融合に取り組んだプロジェクトである。学園の教育理念「おおらかな情操、愛情豊かな子どもに育てる」を受け、運営及び設計方針を「時間をかけて形成された地域の生活環境そのものが、教育の貴重な資源」と位置づけ、地域社会に開いた関係性を創り上げている。隣人と園児が相互に思いやれる心理的および物理的な距離感とは、子供だけでなく大人の想像力を途絶えさせることのない日々の営みによってこそ成り立つものだ。地域とのつながりを信じた事業者の覚悟に、絶妙な空間操作で応えた設計者の力量を高く評価したい。

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13.集合住宅「メゾンカルム日本橋馬喰町」(三菱地所設計、清和綜合建物)

 本地域のまちづくりへの想いが詰まった「日本橋問屋街街づくりビジョン」へのリスペクトとともに、その一つの回答・指針となることを目指し、ファサード、共用部のデザインを行いました。コロナ禍で、長い時間を屋内で過ごすことを余儀なくされる状況が続いた中、狭小居住環境(1R:25㎡)に対して、メーカーとともに新開発したキッチンと洗面を併用した「パウダーキッチン」を採用することで、従来の居室プランに解放感を取り入れることができました。

 また、街としてのコンテクストを地域の歴史からも読み取り、伝統工芸である江戸切子から着想を得た四季折々に変化する影と組み合わせた端正なファサードは、逆梁構造の新たな提案となっています。

(評価コメント)

日本橋馬喰町という周囲の環境を意識した、端正な外観の集合住宅である。小口を薄くした斜めの柱と梁は、構造と意匠の両立を高いレベルで実現している。日射をコントロールする斜めの梁は、雨だれや経年変化も考慮されたディテールで、機能性も併せ持つ。深い軒をつくるシャープな鋭角の梁や、リズム感のある厚みのない柱は、一般的なラーメン構造の外観とは一線を画している。光によって刻々と表情を変える表情は、新しい集合住宅の外観を巧みに創っている。

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15.アウトレットモール「ふかや花園プレミアム・アウトレット」(三菱地所・サイモン、三菱地所設計)

 ふかや花園プレミアム・アウトレットが目指したのは、深谷の自然や産業・文化に寄り添い、その魅力を活かすことで地域の魅力がさらに増すような「地域発展に貢献する観光拠点」としてのアウトレット施設です。

 ふかや花園の歴史や風景と呼応する、新たな賑わいが生まれる場所を形成するために、近隣の景勝地である長瀞の荒川水景、木々や深谷市の名産であるユリの花といった自然の要素や、深谷市にゆかりのあるレンガをデザインエッセンスとして施設計画に取り入れました。また、地域に紐づいた施設デザインだけでなく、彫刻の森芸術文化財団が所蔵する彫刻作品やオリジナルのウォールアート、地元食材を使用した飲食メニューの提供、地元企業によるアトラクションエリア等を設け、地域性を感じながら新しい非日常空間を体験できるようソフト面でも地域の魅力を発信できるよう趣向を凝らしました。

(評価コメント)

これまでのアウトレットモールは、建物としての魅力に欠けていることが多かった。構造は仮設建築物のようだし、仕上げもどこか安普請で短期的な収益のためだけにつくられているように見える建物が多かったように思う。 ところが、アウトレットモールも、年月を重ねるうちに当初の安いものを買う場所というよりも滞在型の施設として定着してきている。さらに言えば、SDGsなどの流行もあり、アウトレットという業態が流行遅れの売れ残り商品を買う場所というよりも、まだ使えるものを廃棄せずに活用し新たな魅力を再発見する場所へと変化してきているのかもしれない。ふかや花園プレミアム・アウトレットでもその変化を後押しするかのように、レンガなどの無垢の素材が使用され、時間をかけた持続的な開発が行われている。

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<参考> 

  • 三菱地所グループ グッドデザイン賞受賞実績

1998年度  「クイーンズスクエア横浜」

2000年度  「丸の内仲通り」

2001年度  「国立室戸少年自然の家海望台」

2003年度  「丸の内ビルディング」

2004年度  「M.M.TOWERS」「日本テレビタワー」「品川セントラルガーデン」

2005年度  「ザ・フィネスト上野毛パークハウス」「洗足池スタイルハウス」「フォレスト南平台」

       「ザ・ハウス南麻布」

2006年度  「井の頭公園パークハウス吉祥寺南町」「追手門学院大学守衛所」

「明治安田生命ビル街区再開発」

2007年度  「セントラルガーデン・レジデンス」「ザ・ステージオ(共同事業)」

「読売北海道ビル」「オンワード仙台支店」「国際文化会館」

「横浜ベイクォーター」「新丸ビル」

2008年度  「M.M.TOWERS FORESIS」「CAPITAL MARK TOWER(共同事業)」

「成蹊大学情報図書館」

2009年度  「本郷パークハウス ザ・プレミアフォート」「The Kitahama」

2010年度  「パークハウス フォレストリエ」「パークハウス 木々 津田沼前原」

       「パークハウス瀬田一丁目」「スタイルハウス目黒緑が丘」

「ミッドオアシスタワーズ」「パークハビオ駒沢大学」「soleco(ソレッコ)」

2011年度  「パークハウス吉祥寺OIKOS」「パークハウス江ノ島」「豊洲フロント」

「大鉄工業本社ビル」「成蹊学園キャンパス」 

2012年度  「ザ・パークハウス 茅ヶ崎東海岸南」「ザ・パークハウス 六番町」

「5つのアイズ」「スマイラボ」「八事山興正寺 境内整備計画Ⅰ」

2013年度  「ザ・パークハウス 池田山」「東洋文庫」「熊谷商工信用組合本店」

2014年度  「丸の内仲通り」「MARK IS みなとみらい」「『はらくっつい東北』シリーズ」

「ザ・パークハウス 代官山レジデンス」「ザ・パークハウス 渋谷美竹」

       「ザ・パークハウス 戸塚」「ドレッセ世田谷桜レジデンス(共同事業)」

「スーパータックフィットMNT(共同事業)」

「全館空調エアロテックのダクトレイアウトシステム」「制震賃貸住宅エムアセット」

2015年度  「ザ・パークハウス グラン 千鳥ヶ淵」ベスト100受賞

「マンションのランニングコストの見える化『マンション家計簿』」ベスト100受賞(グッドデザイン・未来づくりデザイン賞受賞)

「築古ビルのバリューアップ転貸事業『Reビル』」ベスト100受賞

「ザ・パークハウス グラン 三番町」「ザ・パークハウス 上鷺宮」

「ザ・パークハウス 追浜」「SKYZ TOWER&GARDEN(共同事業)」

「パークハビオ赤坂タワー」「西新宿 CLASS in the forest」「プレーン・ルームズ」

「そなえるカルタ」「BIO NET INITIATIVE」「脇浜寮」

2016年度  「ザ・パークハウス 晴海タワーズ」「賃貸物件の無人内覧サービス」

「遊休資産となった社宅再生転貸事業」「新築分譲マンションのための研究開発手法」

「渋谷董友ビル」「本社ビル+企業ミュージアム『安川電機みらい館』」

「『オーダーグラン』駒沢ステージ2ホームギャラリー」

2017年度  「ザ・パークハウス グラン 南青山」「ザ・パークハウス 市谷甲良町」

「ザ・パークハウス 東陽町レジデンス」「プレイスヴィラ喜多見」

「BAYZ TOWER&GARDEN」「集合住宅向けPC工法のシリーズ化」

「空気の価値化『新マンションエアロテック』」「住まいの中に、木の小部屋『箱の間』」

「大手町フィナンシャルシティ グランキューブ」「星のや東京」

2018年度  「ザ・パークハウス 西新宿タワー60」「蘆花公園 ザ・レジデンス」

「ザ・パークハウス 中之島タワー」「ザ・パークハウス 新宿御苑」

「『そなえるドリル』ドナタデモプロジェクト」

「『各住戸玄関前宅配ボックス』を利用した集合住宅における新しい宅配システム」

「グリーン付家具『ボタニカルファニチャー』」「ONE ORDER 浜田山ホームギャラリー」

「木造住宅最高レベルの高遮音床」「旧名古屋銀行本店ビル(THE CONDER HOUSE)」

「グランモール公園再整備」「横浜ゴム株式会社 研究開発センター第二ビル」

「X-PRESS有楽町」

2019年度  「ザ・パークハウス 五番町」「ザ・パークハウス 桜坂サンリヤン」

「ザ・パークハウス あざみ野一丁目」

「Under construction (Un.C./アンク)」

「幕張ベイパーク クロスタワー&レジデンス」

「連続両面大開口と国産100%CLTスラブによる深い軒下空間を有する千里・新宿モデルハウス」

「KOJIMACHI TERRACE」

「ヒューリックスクエア東京」

2020年度  「ザ・パークハウス 神戸タワー」「hitoto 広島 The Tower」

「グランドメゾン浄水ガーデンシティ フォレストゲート」

「太陽光でお湯を沸かすZEH-Mスキーム『ソレイユ』」

「一般社団法人幕張ベイパークエリアマネジメント(B-Pam)」

「丸の内15丁目プロジェクト」

「CIRCLES ~人の輪ができる、まちと繋がるオフィス~」

「CLT PARK HARUMI」「福島テレビ株式会社本社」「Medicha (メディ―チャ)」

2021年度 「WORK×ation Site 軽井沢」

「型枠木材のトレーサビリティ認証スキーム」「ザ・パークレックス 大濠公園」

「瀬田の杜 Garden & Terrace」

「天然木ノンビス工法外装材」「大手町ビル・リノベーション」

「LIXIL WINGビル HOSHI」

「明産霞が関ビル」

2022年度  「ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園」

       「ザ・パークハウス 鎌倉」

「ザ・パークハウス 新浦安マリンヴィラ」

       「グランドメゾン新梅田タワーTHE CUBE RESIDENCE」

       「アントグループ本社」

2023年度  「アナザー・ジャパン」

       「3rd MINAMI AOYAMA」

       「天神・因幡町通り地下通路」

       「ザ・パークハウス 自由が丘ディアナガーデン」

       「チャームプレミア グラン 御殿山」

       「シエリアシティ明石大久保 コミュニティHUB」

       「外装用炭化コルク」

       「MEC Industry鹿児島湧水工場」

       「大手町観音堂」

       「Slit Park YURAKUCHO」

       「ホテルオークラ京都 岡崎別邸」

       「成徳幼稚園」

       「メゾンカルム日本橋馬喰町」

       「ENEOSマルチモビリティステーション」

       「ふかや花園プレミアム・アウトレット」

以 上

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