その他
   みなかみ町でのネイチャーポジティブ実現に向けた4つのステップの設計と回復傾向の定量的評価を開始

「自然に根ざした解決策(NbS)」実践に向けて他地域でも活用できる「実践ガイド」を公表

 三菱地所株式会社(以下、三菱地所)、公益財団法人日本自然保護協会(以下、NACS-J)、群馬県みなかみ町(以下、みなかみ町)は、ネイチャーポジティブ※1な社会の実現を目指して2023年に連携協定※2を締結しており、このほど、その成果として、ネイチャーポジティブに向けた4つのステップ設計による効果的なアプローチ方法と、生物多様性の回復傾向の評価方法を策定しました。また、策定した手法を他地域で活用できるよう、地域のネイチャーポジティブ実現に向けた手引書をとりまとめました。

 3者はこれまで、利根川の源流に位置し、ユネスコエコパークにも登録されているみなかみ町を舞台にして、地域全体の生物多様性の保全や再生、その定量的な評価手法の開発、自然に根ざした解決策(NbS:Nature-based Solutions)※3の実践などに取り組んできました。
 ネイチャーポジティブの実現に向けた取組は、生物多様性の保全や再生活動を進めるだけでなく、水資源の保全や災害リスクの低減など、地域・流域の社会経済的課題の解決にもつなげていくことが重要です。この3者による新たな試みとして、ネイチャーポジティブの実現に向けた効果的な4つのステップを設計(図1)。生物多様性や社会課題の現状を客観的に評価するとともに、NbSにつながる施策をロジックモデルに整理(図2)しました。また、その施策の実施状況を適切にモニタリング・評価するべく、生物多様性の回復傾向の定量的な評価にも着手しました。

 また、これらの成果をもとに、みなかみ町以外の地域でも適切にネイチャーポジティブの実現に向けた取組ができるよう、自治体、企業、市民団体などによる活用を想定して手順を具体的にまとめた「地域のネイチャーポジティブに向けた実践ガイド」をとりまとめ、公表しました。これは、みなかみ町の実例を踏まえて、地域のネイチャーポジティブ実現に向けた手順を具体的にまとめた手引書になります。

地域のネイチャーポジティブに向けた実践ガイド

 3者は、今後も生物多様性の回復傾向を定量的にモニタリング・評価しながら活動の妥当性を定期的に検証していきます。加えて、NbSの考え方に沿って進めることで、社会的な成果を生み出せるよう取組を発展させていきます。

minakami1.png図1. みなかみ町におけるネイチャーポジティブの実現に向けた4つのステップ

minakami2.png図2.みなかみ町のネイチャーポジティブ、地域課題解決に向けて設計したロジックモデル


※1:ネイチャーポジティブ:人と地球のために、生物多様性の損失に歯止めをかけ、自然を回復させること。第15回生物多様性条約締約国会議で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」で2030年までのミッションとしてこの考え方が掲げられた。日本の「生物多様性国家戦略2023-2030」にも国家目標としてネイチャーポジティブの実現が掲げられている。

※2:みなかみ町、日本自然保護協会、三菱地所の3者連携協定について:2023年2月27日、ネイチャーポジティブの実現を目指して3者で10年間の連携協定を締結。主に以下5つの取組を推進している。
 ① 生物多様性が劣化した人工林を自然林へ転換する活動
 ② 生物多様性豊かな里地里山の保全と再生活動
 ③ ニホンジカの低密度管理の実現
 ④ NbS(Nature-based Solutions)の実践
 ⑤ 生物多様性保全や自然の有する多面的機能の定量的評価への挑戦と活用
また、2024年6月にも「ネイチャーポジティブ実現に向けた、生物多様性を客観的に評価する6つの手法」を発表している。

※3:自然に根ざした解決策(NbS:Nature-based Solutions):生物多様性の保全や再生、持続可能な管理を通じて社会的な課題にも対処し、人間と自然の両方に利益をもたらす取組のこと。国際自然保護連合(IUCN)が提唱した社会課題解決におけるアプローチであり、国連環境計画でもその重要性が訴えられている。

以 上

【参考資料含む全編はこちら】

clipmailtwitterfacebook