社外取締役メッセージ

取締役(社外取締役)末吉 亙

取締役(社外取締役)末吉 亙

弁護士としての専門性と独立性を発揮し、経営を監督・モニタリングすることで、株主からの負託に応えます。

多様性が議論のダイナミズムを生む

三菱地所は、社外取締役に対する情報提供の機会が充実しています。当社が推進する各事業の状況について説明していただく事業説明会や、当社が開発した施設や運営する施設を見学する現場見学会のほか、社外取締役就任前にも事業説明のレクチャーを受ける機会が設けられています。私は2023年6月に社外取締役に就任したのですが、執行側からの情報提供量は非常に豊富で、情報を出し渋っているのではないかというような違和感はまったくありません。また、何か不足があればすぐに調べて回答をもらえますし、積極的に議論の場も提供してくれています。2025年度からは、取締役会の実効性評価を踏まえた新たな取り組みとして、取締役会後に、当社の個別の事業に係る意見交換に限らず、世界情勢やマーケット動向など、各取締役が着目したテーマについて自由に意見交換を行う場が設けられ、充実した議論ができる体制が整っており、経営監督に役立っています。

この3年間、当社のガバナンス改革は目を見張る速さで進んできました。「三菱地所は資本市場から実力通りの評価を得られていないのでは?」という危機感が社内に共有され、活発な議論が行われたからこそ実現できたものと思います。更なる改革に向けては、引き続き取締役の多様性向上に取り組んでいくことが重要です。バックグラウンドの多様性は、すなわち発想の多様性を保証するものです。それぞれの経験を踏まえた多角的な観点から意見を出し合えば、新たな気づきを得られると同時に、リスクを顕在化する創発的な議論となります。そうして結論に向かって進むダイナミズムこそが、リスクマネジメントにおいても重要です。

2026年6月には、長年にわたり当社の社外取締役を務められた白川氏、成川氏が退任され、新たに渡辺氏、翁氏をメンバーに迎えました。取締役会はその性質上、世代交代が当然必要だと考えています。前述のように当社は社外取締役に対する情報提供が非常に豊富であり、ガバナンスの機能や実効性の継続という点で不安材料はないと考えていますし、翁氏がご就任されたことで女性取締役比率も向上しています。取締役会の多様性の向上、独立性の向上、透明性の徹底などに関する市場からの要請は年々高まっていますが、これら要請の重要性は当社としても強く認識しており、今後も、引き続きガバナンス改革を推し進めていきたいと考えています。

弁護士としての専門性で取締役会をリードし、経営を支える

「長期経営計画 2030」が掲げる、社会価値向上戦略と株主価値向上戦略を両輪に据えた経営方針は、経営戦略の基本に即したものであると認識しています。特に、社会価値向上戦略におけるサステナビリティの取り組みについては、経済情勢や株主・投資家の皆様の関心も十分踏まえた上で、慎重に議論を重ねており、長期的な視座に基づく充実した内容になっていると私は思います。両輪の戦略の更なる統合・推進のため、2025年度には各事業が創出する社会価値に関する中長期目標を具体化し、2026年度からは年次計画において単年度ごとの進捗管理も開始しました。取締役会としてはこの目標に対して、数値を見て「達成/未達」の評価をするだけではなく、未達ならば課題を洗い出してモニタリングしていく必要があります。

長期経営計画も後半戦を迎え、2030年のゴールをより強く意識してモニタリングする段階に入りましたが、ここまでは順調に進捗しているのではないかと評価しています。注意すべきはここから先です。トランプ政権の動向や地政学リスク、あるいは物価高といったものまで、事業環境は刻一刻と変化しています。情勢が激変する中で、経営の一般論としてハイリスクだけれども踏み出すといった決断や、時には戦略の転換を迫られる非常に難しい局面に直面するかもしれません。取締役会としてはそのような経営判断のアクセルとブレーキの踏み具合を適切に監督していく必要があり、私は弁護士として常に「経営判断の原則」を根拠に議論に臨んでいます。

この「経営判断の原則」とは、取締役に法的責任があるかどうか、取締役が善管注意義務・忠実義務に反していないかどうかを確認するための基準です。この基準は、①前提とする事実認識が十分であったか、②意思決定過程においては、多面的な討議検討が保証されているか、必要に応じて専門家の意見を聴取しているかを評価し、その上で、③適正な選択肢の中から、利害得失を判断した妥当な選択をしているかを評価します。これらの評価を踏まえ、弁護士は法律意見書を作成し、企業の判断のプロセスが合理的だったかどうかを客観的に保証するのですが、経営監督の実効性を高める上でも、この考え方・プロセスはとても有効です。

長期経営計画の達成に向けて、引き続き取締役会では情勢の変化を柔軟に吟味して、先を見据えた議論を深めていく必要がありますが、一方で、2030年だけをゴールにしてしまうと、達成するために無理をしてしまい、2030年以降に体力切れして右肩下がりになってしまうおそれもあります。そうした懸念も踏まえ、場合によっては目標数値の修正や、外部環境変化に合わせた見直しの可能性も排除せず柔軟に検討する必要がありますし、そうしたさじ加減ができるかどうかが今後の山場だと認識しています。そのような局面になった場合にこそ機能するのが「経営判断の原則」です。同原則の観点で取締役会の議論をチェックし、判断の妥当性を検証するのが私の役割の一つであると理解しており、当社の企業価値の持続的な成長に向けて引き続き貢献していきます。

「 バッドニュースファースト」が機能しているか

当社の監査委員会は、5名のうち2名が常勤監査委員であり、社内取締役がその役割を担っています。私の経験則では常勤監査委員が社内の方である例は多く、これは社内出身だからこそ迅速かつタイムリーに収集できる情報があるからだと認識しています。社内にいるからこそ現場の実態を把握した上で隅々まで目が行き届きますし、独自の情報ネットワークを有しているというのも強みとなります。不祥事といった最も重要な情報においても、常勤監査委員だからこそ素早くキャッチすることが可能であり、そうした情報を社外取締役が早急に把握し検討することで、より正確かつ実効的な監督・監査が可能になるのだと思います。

そこで重要になるのは、委員間で情報を共有する際の「バッドニュースファースト」がしっかりと機能しているかどうかです。不祥事への対処は情報を発信する委員や、それを受け止める委員に依存する属人的な部分を取り去ることが難しく、監査委員が社外であれば問題ないというわけでもありません。不測の事態・不祥事を知った常勤監査委員が、監査委員長や他の監査委員、取締役会に躊躇することなく適切に情報を共有し、機動的に対処できる体制が構築されているかどうかが重要です。

当社は、常勤監査委員が社外取締役との橋渡し役となることで、不測の事態が発生する以前のささいな事象でも共有・対処する環境が構築されています。情報収集に長けた常勤監査委員から共有された情報に対して、弁護士として「経営判断の原則」の観点から指摘し、社外の監査委員として客観性を持って議論することが私の監査委員としての役割の一つだと認識しています。

As One Teamの人財が企業価値を更に高めていく

当社は人財こそが最大の資産と位置付け、持続的な企業価値向上に向けて、「Professional」「Change Maker」「As One Team」の3つのコンピテンシーを発揮できる人財を育成しています。私の経験から言えば、優秀な人財は尖った個性を有している方が多く、それは高い専門性が求められる「Professional」や「Change Maker」といった方向性に該当すると思います。ただ、そうした人財ばかり集まると舵取りが大変になります。だからこそ、私はチームとしてまとめあげることができる「As One Team」の人財が最も重要だと考えています。

更に、私は3つのコンピテンシーに加えてEQ(心の知能指数)を併せ持った人財を育成することが必要ではないかと思います。当社のまちづくりは長期視点のビジネスです。優秀さだけでなく心の豊かさを併せ持った人財戦略を一層強化していけば、長期にわたる事業においても、変わらない信念のもとお互いのリスペクトを深め、強固なチームワークを発揮し、目標を達成していけるのではないでしょうか。

当社の企業風土、人財の理想像は実はラグビーにあり、だからこそ大いに支援し、「As One Team」をコンピテンシーとして掲げているのではないかと私は直感的に推察しています。尖った人財が特性を発揮しながらOne Teamとなって競争力を強化していく。まさしくワンフォーオール、オールフォーワンの精神です。当社の社員と接する中で、「As One Team」の風土は確実に醸成されていると感じています。今後こうした人財の能力を更に伸ばしていくことができれば、当社の企業価値は更に向上し、「世界一のデベロッパー」を実現できるのではないかと期待しています。

2026年8月

取締役(社外取締役)薗田 綾子

取締役(社外取締役)薗田 綾子

オープンな対話姿勢と高い専門性の融合が企業価値向上の源泉

私は2023年6月に当社の社外取締役に就任しましたが、就任前からとってもフレンドリーで対話の姿勢がある会社だと認識していました。現在は社外取締役として中から経営に携わらせていただいていますが、改めてそうした対話の姿勢を中島社長や他の役員、社外取締役の方々からも感じることができます。

特に社外取締役の方々は、非常に高い専門性を持つ方ばかりで、様々な知見・経験からの貴重な意見を積極的に発言されています。対話も自然体で、取締役会や指名委員会、報酬委員会においても、オープンな雰囲気で活発すぎるくらいの議論が交わされており、最初はとても驚きました。社外取締役の皆さんの三菱地所への期待も大きいので、この議論を本当に企業価値向上につなげてもらいたい、この会社をもっと良くしていきたい、ステークホルダーの方々にとって真に価値のある魅力的なまちづくりを実現してほしい、という熱い想いが込められていて、結果としてポジティブで建設的な議論になっていることも当社の特長だと思います。

外部環境や当社事業領域の変化を見据えた次世代スキル・マトリックスの検討

経営も事業もチームで進めていくためには、当然一人の取締役がすべてのスキルを備えている必要はありません。様々な専門性やスキル、経験を持つ多様な人財の組み合わせこそが経営を強くしていくのだという考え方のもと、企業としてどのようなマトリックスを描いていくべきか、そこをしっかりと考えることが重要です。

今後の当社の成長に求められるスキルを挙げるとすれば、私は「ウェルビーイング」を新たにスキル・マトリックスに加えた方がいいと考えています。実際に、創造性や高い生産性の観点からウェルビーイングをスキル項目に加える企業も出始めていますが、どのようなスキル・経験があればそれに該当するのか、まだ判断が難しい部分があるのも事実です。日本全体や世界、地球にとってのウェルビーイングも含めて、街や企業単位から範囲を広げ、コミュニティの視点を重視した定義付けを行い、それらを見える化する技術を持ち合わせた方にも参画していただことが重要だと思います。

「長期経営計画 2030」の実現及びその先の未来に向け、当社の取締役会がその経営監督機能、モニタリング機能を適切に発揮するために備えるべきスキルについては、毎年指名委員会において議論しています。今後の地政学的リスクなどの外部環境や当社事業領域の変化なども踏まえ、引き続き指名委員会の中で議論し、経営監督機能、モニタリング機能の向上に必要なスキルを特定するとともに、未来に向けた価値創造を実現する取締役を選任していきたいと考えています。

理想の未来からのバックキャストによる企業価値創造の道筋

現在、企業活動のインパクト評価においては、企業価値向上の道筋をストーリーとして示すことが求められますが、私は長期的ストーリーづくりには、理想の未来からバックキャストで考えることが有効だと言い続けています。ありたい理想の未来社会の姿を起点に、そのためにはどういうまちづくりが必要なのか、どんな人財が必要なのかなど、ロードマップに落とし込んでいくと実現可能性が高まります。これらのストーリーに魅力を感じる人たちが集まり、コレクティブアクションやパートナーシップのような形で多くのステークホルダーがつながり合う街が理想的な姿かもしれません。当社は現在、「長期経営計画 2030」や「サステナビリティビジョン2050」の実現に向けて、財務指標のROEやROAなど、様々な指標を定めています。私は非財務指標については、未来に財務価値を創出するものとして「未来財務指標」という表現の方が適していると考えていますが、その「未来財務指標」について、目指すべき未来からバックキャストしてロードマップを描くことで、より具体的なインパクト指標も見えてきます。専門家のご意見なども参考にしつつ、「未来財務指標」を具体的に設定していくことも進めていきたいと考えています。

もちろん、変化が激しく先を見通しづらい今日において、理想の未来からのバックキャストだけでは戦略策定が難しいのも理解しています。だからこそ同時に複数の「未来シナリオ」も必要だと思います。TCFDやTNFDのシナリオ分析を参考にしながら、理想とは異なる未来になったリスクを想定したシナリオも検討し、どのシナリオになったとしても、当社のプレゼンスを発揮できるストーリーを描くことも必須です。シナリオを具体的に描くことで、リスクや不安が見える化され、その対応策や予防策の事前準備も可能です。理想の未来社会の実現は難しい部分もありますが、バックキャスト思考については、当社にしっかりと根付かせていくことが私の使命でもあると認識しています。

ポジティブな発想から描く三菱地所グループの未来

社外取締役の重要な業務の一つとして、マテリアリティに基づく取り組みの進捗確認や監査、アドバイスがあります。現在当社は、社会価値向上戦略として、マテリアリティから抽出した4つのサステナビリティ重要テーマ(以下、4つのテーマ)を推進しています。その選定過程においては取締役会でも議論し、私も意見を出しましたが、結果としてこの4つのテーマは、当社グループと社会の持続可能性の実現に向けて、優先的に取り組むべきことのすべてが盛り込まれた非常に素晴らしいダブルマテリアリティ事例だと確信しています。「次世代に誇るまちのハードとソフトの追求」については、前述のウェルビーイングのまちづくりに直結していますし、「環境負荷低減に尽力し続ける」では、サプライチェーン全体の中で生物多様性の保全や気候変動への緩和と適応などを着実に進め、いずれは、いわゆるカーボンポジティブに進化させていくことを目指しています。「人を想い、人に寄り添い、人を守る」においては、少子高齢化やダイバーシティ&インクルージョンといった、これもまた当社の事業においては欠かすことのできない重要な観点が入っています。最後に「新たな価値の創造と循環」ですが、ここに含まれるイノベーションやパートナーシップといったマテリアリティは、他の3つのテーマにも深く関わっています。むしろ本テーマをベースとして、3つのテーマに関連する取り組みを進め、具現化していくという構造の方が理解していただきやすいかもしれません。

イノベーションの創出には多様性も欠かせない要素です。当社はプロパーの社員が多く、言わば「当社らしい人財」が多数を占めています。悪いことではないのですが、いわゆるチェンジメーカーとなるような、今までの当社の文化にはなかったような人財も、今後は更に必要でしょう。現在もイノベーションには注力していますが、真のトランスフォーメーションで、ガラッとこれまでの枠組み自体をルールメイキングも含めて変えていきましょうという気概のある方々の採用が重要な戦略になると思います。

私自身、これまでのキャリアを踏まえると、時代を先取りするのは得意分野です。また、希望に満ちた笑顔あふれる未来のために何ができるか、前向きな想像をするのも好きなので、そうした考えを皆さんと共有しながら、実際に当社に関わるステークホルダーすべてがポジティブに考えて行動できるような企業風土を構築していきたいと思っています。三菱地所グループが明確な未来ビジョンに向けて、どんどん行動を進めていけば、本当に日本の未来も変革できると確信しています。ステキな未来の実現に向けて、微力ながら伴走していきたいと思います。

2025年8月

取締役(社外取締役)岡本 毅

取締役(社外取締役)岡本 毅

高い自己変革意欲がガバナンス改革を実現した原動力

当社は、2016年の指名委員会等設置会社への移行をはじめ、委員会構成や社内・社外取締役構成の見直し、報酬制度の改定、自己株式の取得・消却をはじめとした柔軟な資本政策の導入など、様々な点で弛まずにあるべき方向に歩みを進め、着実にガバナンス体制の改革に取り組んできました。その背景には当社に根付く「自己変革意欲」が大きく影響していると思われます。

引き続き、取締役会にはモニタリング機能の強化や多様性・独立性の高度化が求められますが、当社の現在のガバナンス体制は、そうした要請に十分応えられるものになっていると自負しています。例えば長期経営計画のモニタリングにおいても、継続的に個別戦略ごとに執行側から詳細な説明が行われ、それをベースに取締役会で密な議論が行われています。また、取締役会のメンバーの多様性、独立性も十分に担保されています。

ただし、現状に満足してはいけません。内外の情勢は変化し続けるに違いなく、外部からの要請も情勢変化に呼応して常に変化していきます。今後更なる対応が求められますが、当社には前述の通り、高い自己変革意欲があり、必要に応じた改革を行うことに躊躇することはありません。更なるガバナンス体制の高度化に向けて確実に歩みを進めていきます。

委員会の強い責任と権限を意識し、その使命を果たす

現在の当社には、指名・監査・報酬という3つの委員会が存在します。それぞれが十分に役割を果たすことで、当社の経営監督・モニタリング機能に直接貢献しています。特に、指名と報酬の両委員会は独立社外取締役のみで構成されていますので、独立性や議論の客観性はより高いレベルで担保されていると言えます。

また、各委員会は、それぞれの責任を保ちつつ、取締役会において委員会における議論の内容などを報告することとしています。その報告に基づく取締役会での議論が委員会にフィードバックされる。そうしたループが取締役会と各委員会の関係を強化させ、経営監督の有効性を更に高めていくものと考えます。

私は指名委員会の委員長を務めていますが、指名委員会は取締役選任議案を決定するという極めて重い責任・権限を有しています。そのため、指名委員会で決定する事項は、株主総会でご承認いただけるものとすることはもとより、すべてのステークホルダーの皆様にご納得いただけるものでなくてはいけません。社外取締役だけで構成される指名委員会において、社内の候補者を見極めるのは容易なことではなく、そのために相当な努力が欠かせません。社内取締役との情報量の差は少なからずありますが、それを前提条件として覚悟した上で、必要な情報を収集しながら、社外取締役の立場として 、何が取締役にとって最も重要な資質であるかという基軸を定めつつ選考を進めていきたいと考えています。

また、こうした選考を進めていく上で、スキル・マトリックスは大切な指標であり大変有意義なものです。取締役会が経営監督機能やモニタリング機能を適切に発揮するために、必要なスキルを構成していくわけですが、それについても委員会で議論を重ねていますし、既存の取締役候補者選任基準との整合性も意識しながら検討しています。スキル項目に何を選ぶかは大変重要であり、また、多様性についても意識していかなくてはいけません。様々な立場や考え方のメンバーが参画することで、取締役会や各委員会の議論が活性化し深まるという意味でも、多くの切り口から最適解を検討していきたいと思います。

長期経営計画のレビュー&アップデートの実施

ここ数年の世界情勢の変化は極めて大きいものがあり、まさに「変化への対応力」がかつてないほどに問われる時代になっています。これは今後も変わらず、取り巻く情勢の変化が急速に進むことを覚悟した上で、これに遅滞なく対処し、その先をも見据えた事業展開を進める必要があります。取締役会としても、そうした見地から長期経営計画を推進しつつ、適時適切な見直しが行われるようモニタリングしていくことが求められます。

2023年度に長期経営計画のレビューを行い、「社会価値向上戦略」と「株主価値向上戦略」の両輪は揺るがすことなく、計画内容についての意義の明確化やテーマの絞り込みなどのアップデートを行いました。その中で、「株主価値向上戦略」においては、KPI等ゴールまでの道筋、戦略の一部並びに配当金や自己株式取得等に関する株主還元方針等に関して見直しを行いました。また、「社会価値向上戦略」では、当社グループ事業をサステナビリティの観点から解きほぐし、マテリアリティの再整理を行いました。その結果として、当社グループのコア事業である、不動産に関わるハード・ソフト双方の事業推進が社会価値向上に寄与することを明確化しました。これはとても重要かつ意義深いことだと思っています。従業員にとっては、自らの仕事の推進・完遂こそがサステナビリティにつながっていると自信を持つことができます。今後も経営陣や従業員の皆さんとの対話、あるいは会社・グループと外部ステークホルダーとの対話などの積み重ねで、更なる長期経営計画のバージョンアップ及び達成を目指していきます。

社外取締役に求められる企業価値向上への関わり方

前述の通り、企業を取り巻く環境変化の潮流は極めて速くなっています。「変化に適応できるものだけが生き残る」という進化の原則に例外はなく、その変化を乗り越えて次のステップへ進むことができるかどうかを追求していくことが重要です。

当社は大手町・丸の内・有楽町エリアという長い伝統に裏付けられた強固な経営基盤を有しています。この強みに甘えるのではなく、この強みをベースとして、次なる時代への大きな変革を進めていかなくてはいけません。それには広い視野を持ち、国内外における変化の潮流をしっかりと捉え、これに対応していく必要があります。当社は、そうした気概を持って様々な施策を打ち出し、新たな潮流を巻き起こすことができる企業であると思います。その過程で生じるリスクをいかにマネジメントし、最適な事業ポートフォリオを構築していけるか。これこそが社外取締役として目指すべき基本的なスタンスであると考えています。

私は国内外で多様な事業を展開するエネルギー企業の経営に長く携わり、また、日本経団連において6年間役員を務め、多くの企業経営者と交流を重ねてきました。その中で、日本、世界の経済・社会の在り方について、多くの提言を行ってきました。申し上げるまでもなく、不動産事業について私が得られる知見には限りがあります。一方で私がこれまでに得た様々な経験や考え方などを活かし、外部の視点を持って、当社グループの企業価値の向上に貢献していく。それが私の役割であり責任であると考えています。

2024年8月