2018/07/30 中川 悠介 氏街を基点としたカルチャーの創り方 第3回 街とカルチャーの関係

アソビシステム 代表取締役

中川 悠介 氏

1981年東京生まれ。学生時代からイベントの企画・運営を手がける。2007年にアソビシステムを設立。拠点とする東京・原宿の街が生み出すファッション・音楽・ライフスタイルなどの“HARAJUKU CULTURE”を、国内はもとより世界に向けて発信する活動を行っている。

異なるジャンルとのクロス(掛け合わせ)から新たな価値を生み出す

新しいものを生み出す上で、大切なのが異なるジャンルとのクロス(掛け合わせ)です。特に今、面白いと思っているのが、個人や、僕らのような中小企業、そして大企業が集まってコラボすることです。大企業といっても、さまざまな部門の集合体ですから、その一部と一緒に何かできればよいと考えています。昨年、村田製作所とのコラボ(※)に関するリリースを打ったところ、すごく驚かれました。でも、それは村田製作所の企画の一部に関して、僕たちに出せる価値を提供しているのであって、こうしたコラボはこれからは当たり前のことだと思っています。

※2017年10月、アソビシステムとIoTサービス企業のウフルが事業提携してIoTキャラクターを考案、村田製作所にその包括的な使用権を提供し、同社の製品プロモーションに活用する契約を締結した。

以前は、大手企業と取引をする場合、「口座が開けないから代理店を通してほしい」とよく言われました。でも、今は大手企業もそんなことを言っていられなくなってきているのではないかと思います。何か新しいものを生み出すためには、規模の大小に関わらず、アイデアを持っているところと付き合う必要があります。例えば、大きなビルのデザインをしてほしい相手が個人の場合もあるでしょう。

僕は、さまざまな分野の人たちと直接つながっていくことが大切だと思っています。異業種の方と会うと、面白いですよ。あるパーティーで某不動産会社の方と知り合ったんですが、最近は週に一度ぐらい会って、「このビルどうしよう」みたいな話をたくさんもらっています。そうすると、例えば、そのエリアで事務所を探していた知り合いを紹介して契約に結びつくこともあります。普通なら、仲介者がいないとなかなか実現しないことが、直接つながることによってすぐに実現でき、次のステップへと進みやすくなります。

そうやっていろいろな人と直接つながるために、僕らは自分たちを「芸能事務所」と呼ばないようにしています。芸能事務所ってとっつきにくいし、多分、日本の中でもかなり閉鎖的な業界だと思います。なぜなら、基本的にタレントを使ってもらってその対価を受け取るだけなので、あまり業界以外の人と会うことがなかったから。僕らはそうではなくて、言ってみれば「エンタメやカルチャーのコンサルタント」になりたいんです。だから、どこかと組んで何かを始める時は、その会社の考え方や、どんなことに興味を持っているのかなどを聞き、最初に目的を明確にするようにしています。

村田製作所の場合は、目的が明確でした。自分たちが持っているさまざまなセンサーの技術をどう伝えるかが課題だったんです。それをCEATEC(IT・エレクトロニクスに関する最先端の技術・製品を発表する国際展示会)で普通に発表しても、その場にいる人たちにしか伝わらない。そこで、僕らは「キャラクターにしませんか」と提案しました。そうすれば、難しい技術をわかりやすく伝えることができて、より大きな話題になりますよね。

今、取り組んでいることの一つは、モノづくりと僕らのコンテンツを掛け合わせることです。現在はeコマース(EC)の普及で誰でも自由にモノを売ることのできる時代です。でも、ECだけでは商品と消費者が出会う機会はなかなか広がりません。もっと広げるには、やはりリアルな場所が必要です。そこで、支払いアプリを提供しているBASEという企業と組み、「ASOBASE(アソベイス)」というイベントを始めました。このイベントでは、若いクリエイターが作り、普段ECだけで販売している商品を集めて販売すると同時に、僕らが得意とする音楽・ファッション・カルチャーなどさまざまなコンテンツを展開し、商品との新たな出会いの場をつくります。

東京・丸の内とニューヨークの共通項

スカイツリーと東京タワーの両方が見える、とてもいい場所で新たなプロジェクトをスタートする予定です。日本の街は、壊して造るのが基本のため、同じような建物ばかりになっていて、面白味がありません。渋谷の再開発でもいろいろな会議に出ましたが、新しいビルがいくつも建っても、ほとんど一緒で、中にどんなテナントが入るかぐらいの違いしかない。屋上に関しても同様で、機械置き場になることが多く、屋上が使えるビルは日本では珍しいんです。日本の場合、屋上と言えばビアガーデンのイメージが強いですが、海外ではもっと多様な使われ方をしていて、ルーフトップは一つのカルチャーになっています。日本でも、屋上一つのカルチャーにしていきたいと思っています。

海外に出かけると、日本は観光資源が圧倒的に少ないと感じます。遊びに出かける場所が少ないというのは、一番のマイナスポイントだと思っています。僕が海外の都市で好きなのはニューヨークです。アートやカルチャーやビジネス、いろいろなものが渾然一体となっているところに魅力を感じます。ニューヨークにはルーフトップがあるホテルが多くあるんですが、夜はうるさいので耳栓が置いてあります。耳栓をしてもうるさかったですけど(笑)、「これもニューヨークのカルチャーだな」と楽しむことができました。

ニューヨークと東京は似ていると思います。東京もいろいろなものが混ざり合っていますよね。特に常盤橋は、東京駅が近くて、立地的にとても価値があります。最近まで自民党の「ナイトタイムエコノミー(時間市場創出推進)議連」に参加していましたが、「終電をあと1時間だけ遅くしたらどれだけ遊べるか」という議論がありました。遊びだけでなく仕事も同じで、遅く働きたい人は遅く働けばいいと思う。駅の近くというのは、そういうことができる自由さがあります。

丸の内・常盤橋で文化をつくり出すとしたら

もし、僕が丸の内や常盤橋で何か手がけるとしたら、アートをやりたいですね。東京のど真ん中で、世界のハブになれる場所ですし、均質的なビルやコンクリートであふれている場所だからこそ、かえってアートが映えると思うんです。海外と比較すると、日本はアートが少なすぎるし、クリエイターが軽視されていて、表に出ることが少ない。それが今、少しずつ注目を集めるようになってきています。

昨年、日本橋茅場町で「スーパー浮世絵『江戸の秘密』展」というイベントを開催しました。ボストン美術館の浮世絵をデジタルデータ化して、最新の映像技術で動かしたり立体的に表現したりする企画ですが、外国人の来場者が多く、アートへの関心が高いことがわかりました。今後、アートやクリエイターの価値は、世界的に高まっていくのではないかと思います。若手クリエイターに東京を表現してもらうと、面白いものができるかもしれませんね。

今、日本では東京オリンピックが開催される2020年にみんなの意識が向かっていて、その後のことがあまり語られないことを危惧しています。僕は、2021年にやれることを残したい。オリンピックが終わった後に残された会場で、どんなコンテンツを提供できるかが、僕たちの未来だと思っています。

Editors’ INSIGHT

今、時代が多様化にシフトしている中で、カルチャーや情報発信に関しても、マス向けのものは浸透せず、特定のターゲットに向けたマイクロ向けを意識することが重要であることを強く感じました。 また、「原宿は、地名ではなくカルチャーの一つのジャンル」という考え方は、「カルチャー」がしっかりと場所に根差しながらも、それだけに捉われてはいけないという本質を示していると思います。
本PJでは、どのようなターゲット設定を行い、どのような色・エッジを持ったカルチャーを目指すのか。 単一のマス向けカルチャーに拘ることなく、この場所このプロジェクトだからこそ出来る、”TOKIWABASHI CULTURE”の在り方を考えていきたいと思います。

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