2018/05/07 伏谷 博之 氏丸の内を外国人にも魅力ある街にするには 第3回 訪日外国人をさらに増やすためには

タイムアウト東京 代表取締役

伏谷 博之 氏

大学在学中の1990年にタワーレコードに入社。2005年、代表取締役社長に就任。2007年にタワーレコードを退社。2009年、ロンドン発のシティガイドマガジン『タイムアウト』のライセンス契約を取得し、タイムアウト東京を設立。

客単価をいかに上げるか

今、訪日外国人をさらに増やすための取り組みが、さまざまなところで進められています。観光庁が2017年度に行った「『楽しい国 日本』の実現に向けた観光資源活性化に関する検討会議」に有識者として参加したんですが、そこでの課題は、端的に言うと、客単価を上げるにはどうすればいいかということでした。他の観光先進国と比べると、日本では宿泊や食事以外の、エンターテインメントなどの体験に使われるお金が非常に少ないんですね。そこを増やしていくためには、体験できる資源を開発していくことも必要ですし、単価自体を上げることも考えなければいけない。いかに体験消費を増やすかが、インバウンド施策の一番のポイントになっています。

日本はデフレが長かったせいか、海外に比べると単価が安いんです。例えば、常盤橋プロジェクトでも展望台ができるようですが、その入場料をいくらにするか。あべのハルカスの展望台は大人(18歳以上)で1,500円です。この値段は、海外の展望台の入場料と比較すると結構安い。都庁の展望台に至ってはタダですからね。自分たちが提供するサービスは、誰をターゲットにしていて、どんな体験ができて、それはいくらが適正価格なのか。そこをどう考えるか、あるいはどうサポートするかが、大きな検討課題になっています。

ナイトタイムエコノミーの必要性

ナイトタイムエコノミー(夜間経済)を盛り上げることも課題の一つとなっています。ナイトシーンが盛り上がれば、その場所に宿泊してもらえます。もし横浜のナイトシーンが盛り上がれば、今までは東京から日帰りで行く場所だったのが、横浜に泊まるようになりますよね。日本の場合は、交通機関が深夜も動かないと実現は難しいですが、終電が深夜2時に延びるだけでも、帰るまでのゆとりができてずいぶん経済効果はありそうな気がします。

日本では、ナイトタイムは“夜遊び”と捉えられて、「夜は寝るものだ」とか「夜遊びは良くない」という話になりがちです。海外ではどうかというと、ロンドンやシドニーでは「24時間営業」という捉え方がされています。なぜかというと、もちろん夜遊びの側面もありますが、多様性の時代なので、昼間を中心に生活している人だけが楽しい思いをして、夜型の人が昼型の人の半分しか生活を楽しめないのはおかしいんじゃないか、という考えがあります。だから、昼間できることは夜もできるようにしようということで、ナイトタイムエコノミーが捉えられているんです。

『タイムアウトニューヨーク』でも、24時間ニューヨーク特集を組んでいます。単に24時間営業のスポットなどを紹介するだけでなく、救急病院で夜勤をしている人や、毎朝4時半に起きて祈りを捧げるシスターなど、さまざまな時間帯に生活している人々の姿を、夜へアカットや買い物に行きたいといった要望とともに取り上げ、24時間対応の必要性が示されています。このような多様性の観点から、遊ぶ場所だけでなく、深夜でも昼間と同じように生活できるようなインフラを整えることが大事だと思います。

クリエイティブ人材をいかに呼び込むか

インバウンドだけでなく、ビジネスの活性化という視点からも、外国人雇用、特にクリエイティブ人材を東京に呼び込むことも重要だと思います。実は、外国人クリエイティブ人材採用の特区がすでにできているんですが、手を挙げる自治体がない状態らしいんです。イノベーションは、いろいろなところから来た人たちが交流するところにヒントがある。だから、それを逃さないような取り組みをグーグルもフェイスブックもやっているわけです。そういう多様な人の知恵が集積することによって、化学反応が起こる。そういう場所を東京の中に作っておかないと、東京はどんどん遅れてしまうのではないかと思います。

現在は、日本が多様性社会になるための準備期間

『タイムアウト』はもともとシティガイドでしたが、現在はトラベルガイドとの垣根がなくなっています。さまざまな国・地域の人たちが、その街で生活する人・旅行する人を問わず、『タイムアウト』のブランドで提供される同じフォーマットのガイド情報に馴染んでいる状況になっています。

同じように東京も、ここで生活している人と訪日外国人との垣根がなくなっていく状況にあります。インバウンドが増えている日本の現状は、近い将来の多様性社会の到来に向けた準備期間だと思います。日本を訪れる外国人がどんどん増えて、人もサービスもそれに対応していくうちに、いろいろな人たちが混じり合う東京、日本になっていく流れができつつあるのではないでしょうか。

僕が2009年にタイムアウト東京を立ち上げた時は、『タイムアウト』をインバウンドとクールジャパンの両方に貢献するメディアとして使おうと思って日本に持ってきました。当時は、外国人旅行者の訪日を促進する政府の「ビジット・ジャパン・キャンペーン」が2003年に始まってからだいぶたっていたにもかかわらず、まだ東京に外国人は少なく、見かけるのが珍しいほどでした。そこで、せめて外国人が多そうな広尾にオフィスを置いたんですが、それでもそんなに会いませんでした。

それが、わずか10年で、今では当たり前のように外国人とすれ違うようになりました。このまま進めば、外国人の雇用や定住がさらに進んで、あと数年で、外国人と一緒に生活するのが当たり前の世界になっていると思います。ですから、今インバウンド対応を一生懸命やっておけば、隣に外国人が住むようになっても、順応できるのではないか。そういう意味では、もちろん観光客向けの施策を打つことも大事ですが、外国人と一緒に丸の内で生活していくために何が必要なのかという視点で考えた方が、未来の多様性社会に向けた対応になるのではないかと思います。

外国人に人気の街といえば原宿ですが、なぜ外国人は原宿が好きなのか。“カワイイ”ファッションが好きな人のインタビューを聞いてみると、自分の国でああいう格好をすると奇抜に思われて注目を浴びてしまうけど、原宿でなら、誰も何も言わないし、自分らしく心地良く歩けるし、生活できるからだそうです。つまり、原宿は多様性を受け入れているということです。どんな格好をしていても許容される、文化的受容性の高い街だと言えます。丸の内も、多様性を受け入れることができれば、近い将来、原宿のように、外国人に人気の街になる可能性は大いにあります。

東京は本当に広くて、『タイムアウト東京』の外国人編集者が言うには、ロンドン5つ分くらいあると。それだけ広大な都市の中で、俯瞰的に見て、ぜひ他の場所と似ていない空間をつくってほしい。「この場所でしかできないこと」を活かした街づくりをしてほしいですね。そうすると、東京ではなく、丸の内や常盤橋をめがけて訪れる人が増えてくると思います。

Editors’ INSIGHT

東京という都市について、世界から見た観光・文化という側面で語って頂きました。
都市における観光資源は、その土地に根付く文化や食事、路地裏の雰囲気、その場所でしか体験出来ないことであり、その魅力は、日本人と外国人とで感じ方が異なり、日本人の感覚だけでは上手く伝えることが難しい場合もあるということ、また「インバウンド」と「多様性」の関係、「多様性」から生まれる「ナイトタイムエコノミー」に対する見方も非常に興味深いものでした。
東京駅前の常盤橋という場所で、どのような観光要素を取り込み、どのような魅力発信を行っていくべきか、検討を深めていきたいと思います。

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