2017/12/11 藤村 龍至 氏イノベーションを起こす都市設計、空間設計 第3回 コミュニケーションを生む空間と、オフィスの未来

東京藝術大学美術学部建築科准教授 RFA主宰

藤村 龍至 氏

建築家・ソーシャルアーキテクト。東京工業大学大学院博士課程単位取得退学。2005年より藤村龍至建築設計事務所(現RFA)主宰。2010年より東洋大学専任講師。2016年より東京藝術大学准教授。

インフォーマルなコミュニケーションを生み出すには

オフィスの設計では、ちょっとした立ち話のような、インフォーマルなコミュニケーションが生まれやすいことがとても大事だと思います。藝大のキャンパスは小さくて、いろいろな科の先生とよくすれ違うので、立ち話でいろいろと情報交換しやすいキャンパスです。

インフォーマルなコミュニケーションを生み出すには、いろいろなやり方があると思います。大学にいて思うのは、中で何をやっているかがよく見える、トランスペアレンシー(透明性)が大事だということです。もっと出入りが自由だったらいいのに、と思うことは多いですね。藝大では外部から視察に来た人たちのためのツアーをよくやるんです。この建物(総合工房棟)の1階には工芸科が入っていて、鋳金、鍛金、陶芸など、いろいろな工芸をやっています。普段は入れないのですが、ツアーをすると、創作の現場を見ることができて面白いです。仕事も同じで、機密保持などの必要はありますが、人がどういうふうに仕事をしているかが見えることは、すごく大事だと思います。

渋谷にある私の設計事務所は、ビルの1階、路面にあります。ヨーロッパの設計事務所は路面のところが多く、割と働いている様子が見えるんですね。何を設計しているとか、大事なものは見えませんけど。そういう、互いの仕事が見える関係を、もっとつくらなければいけないのではないか。設計プロセスもそうですが、どういう考え方や動き方で、ものをつくっているかを知るのが面白い。それがわからないと、「縦割り」になっていく感じがします。この建物は研究室が並んでいますが、隣の研究室のゼミの仕方や打ち合わせの仕方が何となくわかるんです。そのように、様子がなんとなく分かることは大事で、それはあらゆるオフィスにも言えることなのではないかと思います。

常盤橋プロジェクトのような巨大なオフィスビルの場合、どうすればいいでしょうね。例えば、セキュリティのラインを1階ではなく、もっと上のフロアで切るようにして、そこまで見えるようにしてもいいでしょうし。もっと言えば、エレベーターを透明にして、いろいろなフロアの様子を見ながら上まで行くことができたら、すごく楽しいと思います。そういう考え方でできているのが「せんだいメディアテーク」です。公共施設を7層積層しているのですが、構造的にものすごいチャレンジをして、エレベーターコアを透明にしています。すでに商業施設や公共施設、役所などでは透明性が取り入れられているわけですから、民間のオフィスにも応用できると思います。

オフィスのあり方は今後どう変わっていくか

今後、建築のあり方は恐らく大きく変わると思います。店舗は今、大きく変わっていますよね。ネット通販が普及して、モノを売らない店舗がどんどん増えています。1984年に有楽町マリオンができた時、入店した有楽町西武は、デパートとしては小さかったのですが、セゾングループの代表だった堤清二さんは、それを逆手にとり、金融商品や不動産など、モノではなく情報を売るんだといって、そのためのフロアをつくったりしました。当時は流通業界から「商品の売場がない」と批判されたそうですが、それが今ではリテラルになっていて、巨大ショッピングモールでも、体験をセットにしないと人が集まらなくなってきています。

オフィスも、だんだんそういうふうに変わっていく部分があるかもしれません。建築家の妹島和世さんが、2010年にベネチア・ビエンナーレ国際建築展でディレクターをやった時のテーマが「People Meet in Architecture」でした。「人々は建築で会う」というのは、言い換えれば、「人々を会わせるのが建築」だということです。ネット環境が並行して存在する中で、「会う」ことの質を高めていく必要があるように感じます。

仙田満さんの『人が集まる建築』(講談社現代新書)に、広島市民球場(マツダスタジアム)についての記述があります。設計する際に、野球というのは2〜3時間のゲームを楽しむだけじゃない、と考えると、ああいうショッピングモールのような野球場ができるわけです。ぐるっと回る回遊動線があり、いろいろなコンテンツがあり、いろいろな座席があり、以前の単純な劇場型ではなくなってきている。欧米のスタジアムと比較すると、独特の進化をしていて、本当に日本的な感じがします。野球場なのにバーベキューもできますよね。やはり、飲み食いしながらくつろいで過ごすというのは、日本人の本質なのかもしれません。昔から、神社の縁日ではパブリックスペースで飲み食いしているわけですから。そういう本質が、情報環境との対比で、建築にどんどん表れてきている感じがします。外国人も、日本に来たらそういうところが面白いと思うかも知れません。実際、高架下でビールケースに座って焼き鳥を食べるみたいなお店って、外国人客の方が多かったりしますよね。

マネジメントが建物の魅力を左右する

日本型の巨大都市開発も2周目に入ってきました。最初の整備から、長いものだと50年近くたち、ずっと生き続けているプロジェクトと、人が集まらなくなってしまっているプロジェクトで明暗が出てきています。その成果を見ると、マネジメントの部分でうまく変わり続けて魅力を発信しているところが生き残っているという感じはします。

これはニュータウンでも同じ。同じような時期に同じような規模で同じように駅から離れている場所にできたニュータウンでも、マネジメントの些細な差で、すごく活き活きとしているところと、どんよりしているところがあります。

マネジメントを成功させるためのポイントは、プライドが持てるかどうかだと思います。最近、「シビックプライド」とか「町単位でのプライド」ということがよく言われますが、ミクロでいくと、建物単位とか建築単位のプライドが大事になってくるのではないでしょうか。特に、常盤橋プロジェクトの場合は68万平米もの広さがあり、ものすごい数の人が集まる“街”ですから、その建築におけるプライドをどうつくるか。以前は、デベロッパーやマネジメント会社が頑張るというイメージが強かったと思いますが、これからは、もっと参加型でもいいと思います。ニュータウンでも、デベロッパーがいないところが結構ありますが、住民側がきちんと組織をつくってマネジメントしようという動きが出ているところもあります。一方で、全くお任せになってしまって、文句を言うばかりみたいなところもあります。文句を言ってばかりだと、マネジメントする側はどうしても保守的になってしまい、硬直化していきます。そうならないためにも、利用者側とマネジメント側が一緒にやっていく、参加型のカルチャーみたいなものをうまくつくっていくことが重要になるのではないでしょうか。

Editors’ INSIGHT

現代の街づくりでは、建築的なハード面の価値だけでなく、それを使いこなすソフト面の価値、そしてそこに根付くコミュニティの重要性が益々高まってきています。
今回お話頂いた、関係者や世間を巻き込みながら開発を進めていくという考え方は、開発中の合意形成だけでなく、その後の街の繁栄に向けても大きな意味を持ちます。
「如何に街づくりのプロセスをオープンに出来るか」というテーマは、作り手と使い手の境界線が曖昧となってきている今の時代において、非常に重要なカギとなる可能性を感じました。

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