GINZA KABUKIZA ~設計監理~

伝統を継承しつつ近代的な建物に-。実現したのは、歌舞伎座を想う人々の視点。

2016/3/7更新

写真:株式会社歌舞伎座

協力:松竹株式会社、株式会社歌舞伎座

三菱地所設計のルーツは、1890年に当時の三菱社によって設置された「丸ノ内建築所」に始まります。数多くの街づくりに携るなか、2001年に設計監理事業部門を分社化し「株式会社三菱地所設計」を設立。専門分野のさらなる強化を図りました。
1893年の創業から、私たちが建築設計を行ううえで一貫して守り続けているポリシーが“使われる方の視点で設計する”ということ。その理念の象徴ともいえるのが、今回ご紹介するGINZA KABUKIZAプロジェクトです。
私たちのミッションは『人々の記憶に息づく歌舞伎座の再現』と『近代的な機能および環境の実現』でした。

長年にわたり刻まれた“時間”を継承するために ~積み上げてきた実績と、そのノウハウ・技術を提供~

第四期歌舞伎座が完成したのは1951年。半世紀以上にわたり歌舞伎の殿堂として威風を保ってきたものの、二度の火災による躯体の劣化や、耐震性、バリアフリーへの対応といった課題に直面し、建て替えを余儀なくされていた。
建て替えの検討が進む中、松竹ADKスクエア(現・銀座松竹スクエア)などで評価の高かった三菱地所設計に白羽の矢が立った。プロジェクトマネージャーを担った野村和宣は、当時をこのように振り返る。

「私たちは『使われる方の視点に立つ』ということをベースに建物を設計していきます。そして、それとともに欠かせないことは『社会に貢献できる、評価される』建築設計です。それらを具体的に掘り下げていき、それを実現するためには、どのような技術、ノウハウを提供していくのか、と考えていきます。特にこの“歌舞伎座”は、日本の伝統芸能を継承するための歌舞伎専用劇場という、まさに社会的意義、価値の高い建築物ですから、大きな責任とともに私たちの実力を発揮できる、やりがいのあるプロジェクトだと思いました」

日本工業倶楽部会館、三菱一号館、東京中央郵便局など“歴史継承プロジェクト”といえる数多くの案件で培われたノウハウ・技術は、この歌舞伎座でさらなる開花を遂げた。

歴史を継承し、かつ、新たなものを生み出すために ~徹底したヒヤリング、検討、工夫~

写真:野村和宣氏

『歌舞伎座は歌舞伎が演じられる芝居小屋の象徴。これまでの建物を忠実に継承してほしい』という建て主である松竹様、歌舞伎座様の意向に沿って、象徴的な屋根の反り具合から、白壁の色合い、内装に至るまで、徹底して第四期歌舞伎座を継承することを目標に定めました」。
そのこだわりは見た目だけではなく、使用する部材にも及んだ。
「第四期歌舞伎座に使用されていた木材や石材、錺金物など、使えるものは極力再利用しました。正面入口上部の花狭間模様の欄間もそのひとつです。また、それらの部材に傷が入っていても、あえてそのまま残すようにしました。そうすることで、見た目だけではなく、長年にわたり、ここに刻まれた“時間”も継承しようと考えたのです」。

その継承する時間には、使う人間の感覚や感触まで含まれているようだ。
「この歌舞伎座は、歌舞伎の興行だけに特化した特殊な建築物です。今回はオーナーである松竹様、歌舞伎座様だけでなく、実際にこの舞台に立たれる役者の方々、大道具など裏方で動く方々、劇場に足を運ばれるお客様など、多くの方々の声を聞くことで、検討し、工夫を重ねてきました。たとえば役者の方々は第四期歌舞伎座の中で、出した声が劇場内でどのように反響するのか身体で会得しています。ですから観客の方々にゆとりある快適な場を作り上げるとともに、従来の舞台と同じ機能、環境は維持していかなければならない。目に見えるものだけでなく、感じる空気、空間も継承の対象でした。実は、この見えない苦労が、第五期歌舞伎座には数多く詰め込まれています」。

前例のない先進技術で、歴史的な歌舞伎座に新たな息吹を ~災害に強く、機能性に優れた先進的な建築~

写真:劇場の無柱空間を可能にしたメガトラス

劇場の無柱空間を可能にしたメガトラス

第五期歌舞伎座に与えられた与件は伝統の継承だけではない。そもそも建て替える最大の理由は耐震性やバリアフリー対応といった問題。その実現のためには、歴史の継承だけにとどまらない、より一層の先進技術が求められる。

「劇場の上に超高層タワーが配置される特殊な建築物に、いかにして高い耐震性を持たせるか。それが今回の建て替えにおける課題でした。そこで新しい歌舞伎座に選択したのが、鉄骨造によるメガトラスの採用です」。

鉄骨を三角形に組み合わせた構造形式であるトラスは、部材に対して真っ直ぐな軸力で力に抵抗する効率の良い形式で、鉄塔や鉄橋など に多く使われている。第五期歌舞伎座は1階から4階までが劇場部分の吹き抜けで、その無柱空間の上に建つ超高層タワーを巨大な鉄橋が支えているとイメージすればわかりやすい。高層ビルに使用するメガトラスとしては日本最大級であり、前例のない構造となっている。

これからも50年、100年先を見据えた街づくりを ~行政、自治体とともに進めた都市再生計画~

GINZA KABUKIZAプロジェクトでは都市再生計画も重要な要素となった。掲げたコンセプトは“複合文化拠点としての歌舞伎座”。歌舞伎座を中心とした文化の創造と発信、国際交流や啓発機能の一体的な整備を行うことをテーマに、さまざまな工夫を盛り込んだ。
地下鉄と直結した地下広場「木挽町広場」や5階の歌舞伎座ギャラリーや屋上庭園など、歌舞伎を観劇されない方でも自由に交流していただけるオープンスペースを設置。さらには、災害時には帰宅困難者対策として劇場を開放し、地下広場を一時避難場所として利用することも計画に含めている。2013年の竣工以来、歌舞伎座周辺の地域にも賑わいが広がっており、都市再生プロジェクトの意義は徐々に証明されつつある。

写真:地下広場「木挽町広場」

地下広場「木挽町広場」

写真:屋上庭園

屋上庭園

写真:野村和宣氏

最後に、野村が今回のGINZA KABUKIZAプロジェクトをこのように総括した。「このGINZA KABUKIZAは、従来の閉ざされた空間である劇場建築を超えて、これからの社会に必要な都市機能を備えつつ、昔のような一つの“芝居街”をつくりあげたと思います。また、松竹の方々、劇場に足を運ばれるお客様、舞台に立つ役者さん、歌舞伎座で働くスタッフのみなさん、それら歌舞伎座にかかわる全ての方々の視点をベースに遂行したこのプロジェクトは、私たちが丸ノ内建築所の時代から連綿と受け継いできた“街を、建物を、利用する方々の視点で設計する”というコンセプトを象徴するものとなりました。末長く愛され続けるこの歌舞伎座のように、これからも私たちは50年、100年先を見据えた街づくりを提案していきたいと考えています」。

写真:GINZA KABUKIZA

GINZA KABUKIZA

建築主:松竹(株)、(株)歌舞伎座
所在地:東京都中央区
敷地面積:6,995m²
延床面積:93,530m²
階数:地下4階/地上29階
構造:地下SRC造/地上S造

施設・サービス紹介

個人のお客さま

  • 住まい
  • ショッピングセンター
  • ホテル・リゾート
  • 三菱地所グループCARD
  • 不動産のご相談

法人のお客さま

  • 賃貸オフィス
  • 丸の内のご紹介
  • 物流施設
  • グローバル
  • 設計監理
  • 資産活用
三菱地所グループのプロジェクト紹介 三菱地所がこれまで蓄積してきた開発力・企画力・運営力などグループ全体のリソースを最大限に活用し、展開しているプロジェクトをご紹介します。