取締役会長メッセージ

三菱地所株式会社 取締役会⻑ 吉田 淳一

当社は、「住み・働き・憩う方々に満足いただける、地球環境にも配慮した魅力あふれるまちづくりを通じて、真に価値ある社会の実現に貢献します」という当社グループの基本使命の実現に向け、コーポレートガバナンス体制の整備・推進を経営 の最重要課題の一つとして位置付けています。

指名委員会等設置会社である当社における取締役会の役割は、経営の基本方針を決定するとともに、経営全般の監督を担うことにあります。株主をはじめとするステークホルダーへの説明責任を果たすべく、経営の透明性及び客観性の確保に努めており、これまでに、業績連動型役員報酬の導入、買収防衛策の非更新、取締役会の第三者評価の導入、スキル・マトリックスの開示に加え、取締役会及び委員会構成においては、各委員会の全委員長の独立社外取締役への変更、ダイバーシティの拡充、取締役会規模の見直し、社外取締役比率の向上など、継続的な取り組みを実施してきました。

2024年度は「長期経営計画 2030 Review」を発表しました。2020年4月からスタートした「長期経営計画 2030」に関し、計画策定時以降の様々な環境変化や各事業の進捗を踏まえ、取締役会として議論し、策定したものです。ROA、ROE、EPSの効率性指標のKPI目標は不変ですが、目標達成に向けたアプローチを修正しました。また、「社会価値向上戦略」と「株主価値向上戦略」を両輪とする考え方は変更せず、「社会価値向上戦略」においては、サステナビリティ重要テーマを「当社グループと社会、双方の持続可能性確立のためのアクション」として再定義し、当社グループのコアビジネスであるまちづくりとの親和性を高め、事業とサステナビリティの融合を目指すこと、また、「株主価値向上戦略」においては、原点回帰(Return to Basics)をコンセプトに、不動産事業に係る開発・運営・営業・フィービジネス・資金管理・コーポレート等における「稼ぐ力」の底上げを目指すこととしました。

併せて、株主還元方針のアップデートを発表しました。具体的には、原則毎年+3円の累進配当の導入及び継続的・機動的な自己株式の取得です。同方針のもと、約500億円の自己株式取得(取得期間:2024年5月~同年11月)を完了しました。なお、2025年5月には約1,000億円の自己株式の取得(取得期間:2025年5月~同年11月)を決議しています。

「長期経営計画 2030」も6年目に入り、折り返し地点を迎えました。米国の通商政策の動向及び地政学的な動向による経済情勢、物価動向並びに国内での金融政策及び海外での金利・為替等金融動向等を引き続き注視していく必要がありますが、「長期経営計画 2030」の目標実現に向けて、ポートフォリオの分散や適切な事業推進により、その影響を最適化した上で各事業の成長に必要な投資を継続する方針です。また、多様なビジネスニーズに合わせたワークプレイスの整備や、国内の消費行動の変化及びインバウンド需要を捉えた商業施設・ホテルの運営等、新たな価値の創出を強化し、社会情勢の変動により顕在化した課題に対して取り組みを進めます。

取締役会では、近年の目まぐるしい環境変化の中において当社グループに求められる価値も変わっていくという認識から、冒頭に記載した継続的な取り組みにより実効性の向上に努めるとともに、「社会価値向上戦略」「株主価値向上戦略」の推進において、ステークホルダーの皆様に支持され、当社グループらしく成長を続けるためには何が必要か、議論を積み重ねています。

取締役会の議長として、執行経験を活かしながら、多様な知見・経験を有するメンバーで構成される取締役会での活発な議論を促し、リードすることで、長期的な目線での経営監督体制を構築していきます。私たち取締役会は、当社グループの基本使命のもと、これからの社会や環境の変化を見据えた経営の推進に全力で取り組み、株主・ 投資家の皆様の期待に応えてまいります。

2025年8月

三菱地所株式会社 取締役会⻑

吉田 淳一